[2015年5月]無固定期間労働契約への転換

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 上海邁伊茲蘭璽人材咨詢有限公司の向井蘭(日本国弁護士)と申します。
弊社では御客様の人事労務に関する御相談対応等を担当致しております。


 第1号の今回は労働契約の無固定期間の転換について述べたいと思います。
既に労働契約法が施行されて7年が経過し、上海とその他の中国の地域では取扱いが
異なること、運用が若干分かりづらいことから改めて説明致します。


 労働契約法第14条2項3号によれば、固定期間労働契約を連続して2回締結し、かつ
働契約法第39条(即時解雇)及び第40条第1項、同条第2項(無過失解雇)の規定す
る状況が無く、労働契約を更新する場合は無固定期間労働契約を結ばなければならな
いとされています。
 ここで問題となるのは「労働契約を更新する場合」の意義です。「労働契約を更新
する場合」というのは、従業員と企業が双方更新を希望する場合を指すのか、もしく
は従業員が更新を希望さえしていればよいのか、明確ではありません。前者の解釈を
取りますと、企業が更新を希望しない場合は、労働契約法第14条2項3号が適用され
ず、従業員が労働契約の更新を希望しても、企業が期間満了により労働契約を終了
させることができます。こちらが上海市の労働仲裁や裁判で採用されているルール
です(上海ルール)。
後者の解釈を取りますと、従業員が2回目以降の労働契約の更新を希望する場合は、企
業は無固定期間労働契約を締結しなければならなくなり、期間満了により労働契約を
終了させることができません。こちらは、上海以外の都市の労働仲裁や裁判で採用さ
れているルールです(北京市にだけ適用されているわけではなく、上海市以外の主要
都市で適用されておりますが、便宜上「北京ルール」と呼びます)。


・上海ルール、北京ルールの比較について
 上海ルールと北京ルールの違いをまとめると具体的には以下の通りとなります。
 2回目以降の労働契約更新時に大きな違いがあることが分かります。もっとも、
中国政府は、労働者の権利保護を明確に打ち出しており、今後、最高裁の解釈で労働
契約法第14条の適用に関する解釈を明確にするとの動きも出ており、今後の裁判例や
通達に注目する必要があります。
なお、契約期間満了を理由とする退職の場合は経済補償金を支払う義務がありますの
でご注意ください。

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