2015.05.01
経営開発室 片瀬陽平
コラム第3回目
<利益について>
キャッシュの最大化を考えるに当たって最も重要な項目は利益の最大化です。
現在の会計は発生主義を利用しているために、利益の額=キャッシュの額とは
なりませんが、利益の最大化がキャッシュの最大化につながることは明らかです。
ただし、ここで考えなければならないことは、利益という概念についてです。
会社は1年間の活動の結果として財務諸表を作成し、最終利益を算出します。
つまり利益とはその1年間の活動の成果、言ってしまえば過去の成果でしかない
のです。いくら過去の利益を分析しても、活動は変えられない。つまり利益額も
変えられない。これが利益の実態なのです。
<未来の利益>
そのためにCFOが作らなければならないものは、会社の“未来の利益”です。
では、この“未来の利益”を作るために必要な要素とは何かを次は考えてみましょう。
利益とは事業活動の結果です。過去の利益は財務諸表や申告書によって認識され、未
来の利益は将来の財務諸表や申告書によって認識されます。つまり未来の利益を現時
点で知るためには、現時点において将来の財務諸表や申告書を作るしか方法がありま
せん。
では将来の財務諸表や申告書とは一体何でしょうか?
そうです! 将来の財務諸表や申告書とは中長期の事業計画によって認識されるのです。通常は5年程度の中期の事業計画を作成します。そして、この5年の事業計画の
最初の1年が“単年度予算”となるのです。中小企業の多くは予算を今年度の何%UP(ボトムアップ)と当期の結果から作成してしまいますが、本当に必要なことは将来
海外でビジネスを続けていられるか否かです。特に中小企業では海外に進出しても3年後に利益を出すことができず撤退を余儀なくされることも多く見受けられます(最終的には現地との価格競争になりますので・・・)。そのために予算作成の方法は5年の中期事業計画をリスクを含めて作成し、その上で単年度予算の策定、1年の事業活動の後に決算書と予算の比較(予実分析)を行い、次年度予算を調整する、このローリング方式という方法により予算を作成しなければ変化の激しい海外でのビジネスを予め成功させることは非常に困難です。
CFO業務という本を読んでも、内部統制の本を読んでも、コンプライアンスとは~~~で合法的な行動は狭義のコンプライアンスで、その他にもコンプライアンスには~~~~このような機能があって~~~~~と非常に難しく書かれています。そこまで現地の駐在員は勉強できませんし、会社が大きくなるまではする必要もありません。
必要なのは上記の、
①“5年の中期事業計画をリスクを含めて作成し”、この部分のリスクとは何か?
②“1年の事業活動後に決算書と予算の比較(予実分析)”、この部分の予実分析の
ポイントとは何か?
まずはこの2つに全神経を注いで良いと思います。営業畑の駐在者であればこの2つを
親会社主導で行ってあげてください。
※可能であればキャッシュフロー計算書と決算書の差異分析(キャッシュフロー経営がしっかりとできているか否か。)についても現地の駐在者に理解させてください。
中小企業において、駐在員の本業はあくまでも営業、マネジメントではありません。
前回のコラムに“CFOに求められる機能とセンスのギャップがブラックボックス”と記
載しましたが、それならCFOに求められる機能を可能な限りそぎ落とし、スリム化し、
営業畑の方でもわかる範囲で定義づけてあげること、これこそが親会社がしなければならないことに他なりません。選択と集中をし、その目的を明確にすることによってブラックボックスを排除することができるのです。
以上