平成18年5月に施行された会社法により、事業承継対策の選択肢が大幅に拡大されました。
今回は会社法を活用した事業承継対策として「相続人等に対する売渡請求」について紹介いたします。
1.「相続人等に対する売渡請求」とは
株式の譲渡制限制度は株式の譲渡を制限するものであり、相続・合併等の一般承継に対しては
その制限の対象ではありません。このため、相続等により会社にとって好ましくない者が株主となり、株式が分散するリスクがあります。
そこで、会社法では「相続人等に対する売渡請求」に関する内容を定款に定めることにより、相続等により株式を取得した者に対し、その株式を会社に売渡すことを請求できるようになりました【会社法174】。
2.メリット・デメリット
メ リ ッ ト |
・相続等を原因とする株式移転を制限することにより、株式の分散を防止できる。 |
デ メ リ ッ ト |
・相続発生の順番によっては、社長一族が売渡請求を受けるリスクがあります。 ・売買価格の決定に時間を要するリスクがあります。 |
3.定款変更の手続き
「相続人等に対する売渡請求」は、その旨を定款に定める必要があります。定款にその旨を定める
ためには、株主総会の特別決議(定款に別段の定めがない場合は議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要になります【会社法309②・466】。
※ 留意事項
「相続人等に対する売渡請求」は、会社が自己株式を取得することになるため、取得財源規制の
対象(剰余金の分配可能額以下)となります【会社法461①五】。
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