【2022年12月】定性的な目標をどう計測可能にするか

 

 

 

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目標管理制度(MBO)において、設定される目標は「計測可能(Measurable)」でなければならない、と言われます。計測できなければ評価ができません。

SMART原則

Specific(具体的である) 何が出来上がれば良いのかが明示されていること
Measurable(計測できる) 達成度が数値(定量的に)で確認できること
Achievable(達成できる) 頑張れば達成できるというイメージが持てる水準であること
Related(上位目標と関連する) 上位組織の目標に間違いなく貢献するものであること
Time‐bound(期限が定められている) いつまでに完成させるかが明示されること

 

目標設定において守るべきと言われておりますSMART原則(上表)における2番目です。しかし、これに囚われすぎるあまり、「実行したかしていないか、何件やったか」で評価が可能な、いわゆる「行動指標」と言われるものを安易に設定してしまい、「成果指標」になっていないという誤りがしばしば起こります。

例えば、営業活動のレベルを上げ、受注を増やしたいと考えている営業マン。受注や売上の目標は数字で示せますが、そのためにどのような構造を今期は作りあげたいのかを書きなさい、と指導されます。

営業活動は、手持ちの案件数と一定程度比例するのは、どの業種業界でも概ね同じかと思います。この会社でも各営業マンがどれだけの案件発掘活動を行っているかということは、重要な管理ポイントでした。そこで「訪問客数、100軒/月」という目標を立て、年間1,200軒訪問達成したら100%とする(同一月内での同一顧客への複数訪問は1軒カウント)、というような指標を作った方がいました。

弊社のコンサルがご相談を受けた際、この方から「受注できそうな案件が出ると1回の訪問時間も長くなるし、同じ顧客に何度もお伺いすることになる。訪問客数は受注が上がる時には少なくなる傾向があって、必ずしもこれが最も重要な指標だとは実は思っていない」と言われました。全く正しい認識ですね。提案に繋がらない訪問を沢山して、この目標は100%達成しました、となってしまうのは、どうにも釈然としません。

この営業マンが、新人さんなら「とにかく今年は沢山のお客様と接触しなさい」という目標に意味があるかも知れません。あるいは営業プロセスが標準化されていて、訪問客数と受注金額の相関も緻密に統計されているため、一定の訪問客数が確保されれば、最終成果である受注金額がかなりの精度で読める、という仕組みになっていれば、この訪問客数という指標にも意味が出てきます。一方、営業マン個々人の技量や、担当する業界によって差異が大きい場合、それぞれの活動のなかで、きちんと売上に繋がる顧客を丁寧にフォローすることがより重要になってきます。この方は、顧客ニーズに合致した「良い提案」ができているという目標にしたいのだが、それ(良い提案かどうか)は計測が難しくてねえ、と言われます。

MBOを正しく機能させるためには、ここで「じゃあ訪問客数でいいや」と妥協せず、例えば、「意思決定権者に対する直接プレゼン数」、「決定要因の事前把握率」、「プレゼン前の内々諾獲得率」など、「良い提案であった案件」の条件を徹底的に考えていただく必要があります。つまり、その方にとっての「営業の質、良い提案」を示す指標を見つけ出さなければならないし、それは人によって異なることが多いため、機械的、マニュアル的に設定することは難しいということでもあります。目標には、SMARTの他にValuable(成果として指標自体に価値がある)という要件が必須です。

もし、御社において目標設定の仕方でお悩みでしたら、是非弊社にご相談ください。

今号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。