1 会社に対する誠実信義義務はどこまで要求されるか
労働契約法第3条Ⅰ項は「労働契約を締結する場合は、適法、公平、平等及び自由意思、協議一致、誠実信義の原則を遵守しなければならない。」と定めています。
これは会社のみならず従業員にも要求されます。興味深い事例がありましたのでご紹介いたします。
2 事例
張は、2012年5月28日、上海のある電子科学技術会社に入社し、販売アシスタントの仕事を担当した。
張は2015年7月3日に会社に休暇申請を提出した(法定の有給休暇ではない)。休暇期間は同年7月6日から24日までであった。休暇理由は「姑が病気になり看病が必要」とのことであった。会社はすみやかに許可をした。張は2015年7月6日から24日まで休暇を取った。だが、実際には、張は2015年7月16日から20日までの間、海外旅行に行った。
会社は2015年7月27日、深刻な規律違反を理由に張を解雇した。解雇理由は会社をだまして休暇を取ったことにより深刻な規律違反を犯したことであった。
会社の就業規則は、従業員に不信行為がある場合、会社は労働関係を解除することができると規定していた。従業員が詐欺的な理由で休暇を取る行為は不信行為に当たると解釈した。
3 判決内容
【結論】解雇有効
一審裁判所は、張の姑は2015年6月30日に医者にかかり、張は7月3日に姑が病気になったことを理由に休暇を取ったが、休暇を取ること自体は詐欺的行為ではないと判断した。しかしその後状況が変化し、その姑の病状が五、六日後に緩和し、看病をする必要が無くなった。つまり休暇を取る必要が無くなった。にもかかわらず、張は残りの休暇期間に海外旅行に出かけた。
会社は張の姑が病気になり看病をする必要があることを前提に休暇を取ることを許可しているので、休暇事由が消えた後、会社への誠実信義義務に基づいて、会社に出社するべきであった。張が会社に実態を説明せず、逆に休暇を利用して海外旅行に行ったことは誠実信義義務に反する。
そのため、会社はこれによって張との労働契約を解除することは不当ではなく、張に経済補償金を支払う必要もないと判断した。
張はこれを不服とし控訴したが、二審も同様の理由で解雇を有効と判断した。
4 まとめ
この事例は従業員も誠実に労働契約を守らなければならないという好例で、不誠実な従業員については場合によっては厳罰が許されこともあります。ご参考になりましたら幸いです。