中国では病気休暇中の従業員は非常に保護されており、多くの裁判例で虚偽の病気休暇申請を理由とした解雇が無効となっております。 今回のアリババ事件もこれまでの流れを踏襲しており、企業側からすると大変残念な結果になっております。 1 疑わしい病気休暇 「病気休暇中なのにコンサートに行った写真が微信にアップされている。このような社員を解雇できないか?」「病気休暇中なのにいちご狩りに行ったことを微信で発信している。このような社員を解雇できないか?」 いずれも私がお客様から受けた相談内容です。 2 アリババ事件 丁さんは2013年1月28日アリババと雇用契約を結びました。契約期間は3年、賃金は月額3万6000元でした。 2013年4月19日、丁さんはアリババに診断書等を提出して病気休暇の申請を行いました。診断書の内容は「頚椎病、2週間の休暇が必要」というものでした。アリババは丁さんの病気休暇取得を許可しました。 丁さんは2013年4月19日にブラジルに行き、同年5月4日に帰国しました。 アリババは2013年5月16日、丁さんに対して、解雇を通知しました。理由は「病気休暇申請日にブラジルに旅行に行き、嘘の情報で会社を騙した。このような行為は会社規則の重大な違反行為に該当するため」との内容でした。 丁さんが労働仲裁を申し立てた所、労働仲裁はアリババの解雇を無効と判断し、丁さんがアリババで働き続けることを認めました。アリババはこれを不服として北京市区人民に提訴しましたが、区人民法院もアリババの解雇は無効と判断しました。 二審の人民法院は「アリババは丁氏の病気休暇は虚偽であると述べているが、客観的な証拠も無く、アリババの主観的な判断に過ぎない。診断書は真正なものであり、アリババはこれを覆す証拠を提出しておらず、解雇は無効である」と判断しました。その後の中級人民法院も同じ判断をしました。 3 日系企業としての対策 アリババでさえも病気休暇問題には悩まされております。 別の機会に詳細をお伝えしますが、このような現状の下では、解雇をして裁判所等で争うのではなく、 ・病気休暇取得手続きを厳格化する ・本人と面談を行い、詳細を(しつこく)聞く ・疑わしい診断書の場合、診断書作成の医師に問い合わせを(しつこく)行う ・読めない、判子の無い診断書等は再度提出させる 等を行うことで会社の姿勢を示し、水際で防ぐ・もしくは長期化させない工夫が必要となります。 上記①~④を行った所、対象従業員も会社の姿勢に押されたのか病気休暇途中で職場復帰をしたことがありました。ご参考になれば幸いです。