PDF版はこちら →華南通信 2025年10月号
党の第二十回三中全会にて、審判指導の強化・法律適用の統一・我が国の労働雇用と社会保障制度の実行および調和のとれた労働関係の構築を積極的に推進するため、最高人民法院は《最高人民法院における労働争議事件審理に適用される法律問題の解釈(二)》(以下「解釈二」という)を制定・公布しました。
「解釈二」は全部で二十一条から成り、競業制限、混同用工、社会保険紛争など社会的関心の高い問題に対して法律適用基準を統一し、法に基づいて労働者と用人単位(以下「雇用主」という)の合法的権益を保障するものです。
「解釈二」全二十一条の中で最も注目すべきは、雇用主と労働者の間で締結される競業制限条項および雇用主と労働者が協議する社会保険料納付問題です。
一、競業制限条項については、「解釈二」の第十三条から第十五条において回答が示されています。
- 第十三条
- 労働者が雇用主の営業秘密および知的財産権に関連する秘密事項を知悉または接触していない場合、労働者が競業制限条項の無効確認を求めたときは、人民法院は法に基づき支持する。
競業制限条項で定められた競業制限の範囲、地域、期間などの内容が、労働者が知悉・接触した営業秘密および知的財産権に関連する秘密事項と適合していない場合、労働者が競業制限条項の合理的範囲を超えた部分の無効確認を求めたときは、人民法院は法に基づき支持する。
- 労働者が雇用主の営業秘密および知的財産権に関連する秘密事項を知悉または接触していない場合、労働者が競業制限条項の無効確認を求めたときは、人民法院は法に基づき支持する。
- 第十四条
- 雇用主が高級管理職員、高級技術職員およびその他の守秘義務を負う者と、在職期間中に競業制限条項を取り決めた場合、労働者が「在職期間中の競業制限は取り決められない」「経済補償が支払われていない」ことを理由に競業制限条項の無効確認を求めたときは、人民法院は支持しない。
- 第十五条
- 労働者が有効な競業制限の合意に違反した場合、雇用主が労働者に対して合意に基づき既に支払った経済補償の返還および違約金の支払いを求めたときは、人民法院は法に基づき支持する。
二、社会保険料納付問題については、「解釈二」の第十九条において回答が示されています。
- 第十九条
- 雇用主と労働者が「社会保険料を納付しなくてもよい」と取り決め、または労働者が雇用主に対しその旨を承諾した場合、人民法院は当該取り決めまたは承諾を無効と認定しなければならない。
雇用主が法に基づいて社会保険料を納付していない場合、労働者が労働契約法第三十八条第一項第三号の規定に基づき労働契約の解除および雇用主による経済補償の支払いを求めたときは、人民法院は法に基づき支持する。
前項の規定に該当する状況において、雇用主が法に基づき社会保険料を追納した後、労働者に対し既に支払った社会保険料補償の返還を求めたときは、人民法院は法に基づき支持する。
- 雇用主と労働者が「社会保険料を納付しなくてもよい」と取り決め、または労働者が雇用主に対しその旨を承諾した場合、人民法院は当該取り決めまたは承諾を無効と認定しなければならない。
最後に、第二十一条において明らかにされているように、本解釈は2025年9月1日から施行されます。
同時に、《最高人民法院における労働争議事件審理に適用される法律問題の解釈(一)》(法釈〔2020〕26号)第三十二条第一項は同時に廃止されます。最高人民法院がこれまでに公布した司法解釈と本解釈が一致しない場合は、本解釈が優先して適用されます。