中国で生活していると、さまざまな場面でデジタルインフラが整っていることを実感します。その中心として普及しているアリペイ(「支付宝」)やウィーチャットペイ(「微信支付」)は中国を代表する電子決済です。電子決済は中国での生活において不可欠なものです。
中国政府が2020年10月に公表した銀行法の改正案によると、デジタル人民元は中国の中央銀行である人民銀行が発行するデジタル通貨であり、デジタル人民元APP内に保存されます。利息は付きませんが、銀行口座が無くても、デジタル人民元を保有できます。現在中国では、デジタル人民元の実用化に向けた取り組みが各所で始まっています。深セン市では2020年10月から2021年2月にかけて既に三回試行が行われ、第一回:羅湖区にて1千万元(200元×5万人)、第二回:福田区にて2千万元(200元×10万人)、第三回:龍華区にて春節直前に2千万元(200元×10万人)が抽選で選ばれた市民に配布されたのと同時に、市内の多数の小売事業者を指定しデジタル人民元決済を実施させています。また、江蘇省蘇州市、河北省雄安市、四川省成都市でも試行が行われています。
デジタル人民元の特徴として、オフライン状態でも使えることがあげられます。支付宝や微信支付はネットワークを通じて決済が行われる一方、デジタル人民元は近距離通信(NFC)を通じて決済が行われます。そのため、電波が届かない場所や災害時などにも活用できるメリットがあります。また、デジタル人民元は自由に外貨と両替できるだけでなく、企業間との貿易取引を行う時、決済通貨としても使用できる可能性があります。
今後当面の間、小規模で各種多様な取引の実験を進めていき、2021年にデジタル人民元の本格的普及が始まれば、ますます紙幣を見る機会は減っていくでしょう。