PDF版はこちら →上海通信 2024年6月号
1.会計法の概要
1985年に施行された中華人民共和国会計法(以下、「会計法」という)は、中国の企業会計制度における最高水準の法規範とされる法律です。この会計法の下に、具体的な会計処理を定めた企業会計制度(いわゆる旧準則)、企業会計準則(いわゆる新準則)等の各会計基準が制定されています。
会計法には、会計処理(会計期間、会計記録の保管、発生主義による記帳等)、会計監督(会社内部での監督、外部機関による会計監査等)、法律責任(本法に違反した場合の罰則等)といった原則的な事項が規定されていて、日常の会計実務で本法に触れる機会は非常に少ないと思われます。しかし、中国会計に関する基本法規であり、中国で会計実務に携わる者にとって重要な法律であることに変わりはありません。
2.会計法の改正
第14期全国人民代表大会常務委員会第9回会議における審議の結果、2024年4月28日に修正草案が公布され、会計法が久々に改正される見込みです(前回の改正は2017年)。
本草案における主な改正事項は下記の通りです。
・会計記録の保管義務について、情報の安全管理を強化することが追加された(第23条)
・会社内部による会計監督制度の確立、整備については、会社の内部統制制度に組み込むことが強調された(第25条)
・監督検査部門の秘密保持義務について、個人のプライバシー及び個人情報の秘密保持が追加された(第33条)
・会計員の責務として、国家機密保持規定を厳格に遵守することが追加された(第38条)
・本法に違反した場合(会計帳簿の不設置、会計資料の偽装・隠蔽等)の法律責任(罰金、刑事責任の追及等の罰則)が強化された(第41~43条)
・記帳代行会社も本法にしたがって法律責任を負うことが明確にされた(第45条)
紙面スペースの都合上、本稿では概要のみを記載しておりますので、詳細については第14期全国人民代表大会のウェブサイト「法律草案征求列表」http://www.npc.gov.cn/flcaw/をご確認ください。改正前後の対照表も掲載されています。
3.留意事項
以下、筆者の私見ですが、今回の修正草案では、近年整備されたデータ3法(個人情報保護法、サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法)への対応や会社及び外部機関に対する法律責任の明確化・厳格化が、主な改正の趣旨と推測します。ただ、改正事項がすぐに会社の会計実務に大きな影響を与えるかと言われると、現時点ではやや不明確であると思われます。
なお、本稿執筆時点(2024年5月中旬)では、修正草案に対する意見募集段階であり、まだ正式に会計法改正の公布はされておりません。したがって、引き続き本法及び関連規定の公布の状況を注視する必要があります。
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