【2024年2月】金融取引における移転価格対応

 

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移転価格対応と言えば、棚卸資産取引又は役務提供が対象であるというイメージがあるが、近年、BEPS2.0プロジェクトを始めとする国際税務に大幅な改正がなされている状況を背景に、これまで重要視されていなかった金融取引に関する移転価格税制上の取扱がますます厳しくなりつつある。本稿は金融取引に関する移転価格取扱改正の経緯、現状、今後の必要な対応について、説明する。

「金融取引に関する移転価格取扱改正の経緯」

 

OECD移転価格ガイドラインのポイント

  1. 金融取引を正確に描出し機能リスク分析を行った上で、比較可能性分析を行うことが必要だと求めている。
  2. 「信用格付」を利用し、信用力、保証等や、融資手数料、貸手の資金コストについても、その取引にかかる独立企業価格である金利の決定ファクターに加味すべきてあるとしている。
  3. 取引銀行から取得する見積金利は実際の市場取引に基づいていないため、独立企業間取引原則からの乖離を意味するものとなる。

 

現状の金融取引に関する取扱

  1. 借手が非関連者である銀行から国外関連取引と通貨、賃借時期、賃借期間等が同様な状況で借入れた場合の利率
  2. 貸手が非関連者である銀行から国外関連取引と通貨、賃借時期、賃借期間等が同様な状況で借入れた場合の利率
  3. 国外関連取引と通貨、賃借時期、賃借期間等が同様な状況で国債等により運用した場合に得られるであろう利率
  4. 実務上、取引銀行からの照会情報を用いるケースがよくある。

 

今後の金融取引に関する取扱

  1. 金融取引の諸要素を勘案し、借手の信用力に関する比較可能性分析を行わなければならない。
  2. 比較可能性分析を検討する際に原則として、借手の「信用格付け」を用いて、「市場金利」を比較対象取引とすることが可能である。
  3. 取引銀行から取得する見積金利は現実の取引に依拠した客観的な指標ではないので、独立企業間利子率として採用するのが適切ではない。

 

中国税務当局の動向

中国はOECD加盟国ではないので、OECDの改訂を国内法に導入する義務がないが、今のところ、何の動きも見せていない状況にあり、引続き見守る必要がある。

 

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