財務会計では、自社が持つそれぞれの設備に耐用年数を決めて減価償却費を計算していますが、実際の設備廃棄時期は、財務会計で決めた耐用年数と必ずしも一致しません。
損益計算書上の観点から見ると、設備が使用不能となる物理的耐用年数まで使い切ることで減価償却費を計上しない期間が発生し、利益を押し上げることがあります。しかし、採算上最も有利な経済的耐用年数で判断した場合は、異なる結果になることもあります。
今回は、時間価値や資本コストを考慮した正味キャッシュ・フローの現在価値に基づいて判断する方法を、簡単な設例で説明致します。
設例:投資額1,500万元、物理的耐用年数7年で、使用後スクラップとして150万元で売却。減価償却5年定額法で残存価額10%、実効税率を25%、割引率を10%と仮定。機械老朽化で、生産能力が落ちて売上が減少し、費用割合が上昇するとし、6・7年目は、減価償却費の計上がなくなり当期純利益が増加と仮定。 (単位:万元)
*1)資本回収係数: 利子を考慮したもとでの現価(例えば投資額)の年平均値を求めるに使われる係数
*2)正味年価: 現在価値総額に資本回収係数を乗じて年当たりの額を算出。投資の時間的効率を加味
正味年価で見ると、使用年数5年のケースが最も高くなります。採算的に考える場合、同じ機械を使うのであれば5年ごとに更新することが最も有利であるとの結論ですが、設備による生産効率の低下やメンテナンスなどの追加コストを正しく把握し、反映させておく必要があります。
キャッシュ・フローに基づく管理会計:
NPV法をはじめとする管理会計の考え方の基礎は、正味キャッシュ・フローの現在価値によってさまざまな判断をしていくというものです。時間価値・資本コストもありますが、上記からもわかるように、企業活動そのものが評価額に影響を与えています。言い換えれば、事業計画を慎重に策定し、計画通りに実行するという経営者として本来行うべきことが要求されるため、経営管理にも有効な手段となります。