2013年下半期において、上海自由貿易区(以下、「自貿区」とする)は国内外から注目を集め、特にこの1ヶ月中国経済の中でも最もホットな話題となっています。しかし、自貿区が正式に成立するまでに多くの不確定な情報が流れ、具体的な政策がまだ公布されていないことから、自貿区に対して、誤解を招いています。
主な誤解は以下の3点です。
1.自貿区が「国外」とみなされる。
自貿区は確かに「四つの自由化」(貨物流通の自由化、投資流通の自由化、人員流通の自由化、貨幣
流通の自由化)という目標を掲げていますが、これらの「自由化」は管理モデルの革新により生じた
「自由化」であって、自貿区を「国外」とみなすものではありません。例えば、貨物の輸出税金還付に
おいては、依然として貨物を「物流園区」に輸送しないと、輸出税金還付を享受することができず、
自貿区内にある「保税区」に輸送された場合、現在の政策により、国内販売として処理されることに
なります。
2.自貿区には税収減免優遇がある。
自貿区の政策には、持分奨励の個人所得税分割納付、ファイナンス・リース輸出税金還付、区内生産
企業の輸入機器設備免税などの一定の税収優遇政策があります。これらの税収優遇は、主に自貿区
の税収管理上、或いはその他区域(例:前海などの地域)で実施済みです。企業所得税税率15%の
ような税収減免は、自貿区外での「複製・普及可能」という特徴を持っていないため、実施されないと
思われます。
3.自貿区政府による監督管理の緩和
自貿区の管理改革の方向は審査許可制度を終結させ、外資系企業に対しても「国民待遇を与えると
いう原則」を実施するものであり、これまで外資参入を制限してきた一部の分野を開放しました。
このような管理の変化は、政府が企業に対する管理、コントロールを緩和したかに見えますが、
実質的には管理の重点を事前の審査・許可から事中、事後の監督へと移行したものです。企業は、
活動前に法律上のリスクについて自己判断しなければならず、政府による事前の審査許可によるリス
ク・コントロールに頼ることができなくなるため、企業への管理要求はより一層高いものとなります。
自貿区の全体的な方向としては、「管理革新」と「複製・普及可能」なことにあり、以前の「経済特区」とは異なり、中国の新しい改革の「試験区」として位置づけられています。
自貿区に対して誤解はありますが、自貿区は物流、貿易などの分野(特に金融分野)において、企業に対して確実に利便性をもたらすことができます。具体的な政策はまだ公布されていませんが、金利の市場化、決済の利便化などによって既に改革の方向性が明確にされていることから、非常に期待できるものといえます。