ほとんどの企業の確定申告が終わろうとしている2012年4月24日に、国家税務総局は《企業所得税課税所得に関する若干の税務処理問題に関する公告》(国税 2012年第15号)を発布しました。来年以降の確定申告の参考になると思われる部分を下記取り上げます。(翻訳を別途添付いたします)
① 季節労働者、臨時雇用者等に対する支出の損金算入
季節労働者、臨時雇用者、実習生、離退職者の再雇用、および外部からの派遣労働者の受け入れにより
実際に発生した費用のうち、給与支出に属する部分については給与支出総額の基数として、その他の項目
(従業員福利費、従業員教育費、組合経費)の損金算入の計算依拠とすることが認められました。上海市
が2012年1月6日に発布(滬国税所〔2012〕1号)した派遣労働者等の給与を福利費の計算基数とすること
を認めた通知を明確に追認した形となります。企業所得税法上、従業員福利費は給与総額の14%、従業
員教育費は給与総額の2.5%、組合経費は給与総額の2%の損金算入がそれぞれ認められています。
② 開業期間中の交際費、広告宣伝費の損金算入
企業の開業期間中に発生した開業活動に関係する交際費支出は、実際発生額の60%を開業費に計上し、
また広告費及び業務宣伝費は、実際発生額全額を開業費に計上し、それぞれ関連規定に基づき損金算入
できると規定されました。従来、多くの企業が開業期間中の交際費を全額開業費に計上し、開業費の償却
を通じて損金算入していましたが、今後は60%しか損金算入できないことが明確にされました。企業所得税
法上、開業期間で無い場合には、交際費は実際発生額の60%と売上高の0.5%のうち少ないほうの損金算
入が認められ、広告費は売上高の15%の損金算入が認められます。開業費の償却は、開業期間終了年
度での一括償却、または3年以上での償却、の何れも認められています(国税函〔2009〕98号)。
③ 過年度の損金過少計上
過年度に実際に発生し、税収規定に基づき損金算入できるが未だ損金算入を行っていない、または過少に
損金算入された費用支出は、企業が税務局に特別申告及び説明をおこなった後、発生した年度まで遡っ
て追加して損金算入できることが認められました。但し、追加認識期限は5年を超えることができません。
従来、過年度の損金未計上の資産損失(貸倒損失、固定資産廃棄損失等)は追加損金計上することが認
められていましたが(税務総局公告[2011]25号)、原価費用等支出については規定されていませんでした。
今回、損金未算入/過少計上の費用支出の追加計上が明確に認められました。例えば、開業期間中の開
業費償却を昨年に申告漏れした、等の場合に税務局への特別申告・説明により今年度にあらためて追加
損金計上できることになります。
④ 損金算入規定と企業の会計処理との調和
企業が会計制度の規定に従い、実際に会計処理を行った支出は、企業所得税法が定める損金算入限度と
範囲を超えない場合には、企業の会計処理に基づいて損金算入し、課税所得額を計算することができると
規定されました。会計処理上の金額が税法基準より低い場合には、会計処理上の金額を税法上も認める
ことが(当たり前のようですが)明確にされました。今までは、例えば税法上償却年数が10年の資産を会計
上20年で償却していたような場合に、10年を超えた後の減価償却の損金算入が認められない可能性もあ
りました。しかし、今回の公告で、上記例での10年を超えた後の会計上の減価償却費も、税務上損金算入
できることが明確にされました。