世界同時株安からの運用リスク回避の目的での実物資産への投資や世界規模でのレアメタル争奪戦が繰り広げられていることから、金属の価格等が乱高下している状況にあるといえます。
このように金属価格等の変動状況が激しいため、特に、金属や化学品関連の業界においては製品の引き渡した時点では確定した売価ではなく、市場価格等を反映した価格を設定し、その後の市況等により、当事者間の協議で過去に遡って売価が修正されることがあります。
収益認識時点において売価が確定していない場合に、売価が確定するまで収益を認識できないのでしょうか。また見積額と確定額の差額をいつ修正するのでしょうか。
まず、企業会計準則において、「商品販売収入の額は、契約、協議上の買手から回収した或は回収すべき金額により確認される。ただし、契約、協議上の回収した或は回収すべき金額が妥当でない場合、この限りではない。」と規定されており、それに加えて、収益を認識するための要件の一つとして「収益の額が信頼性をもって測定できること」が挙げられています。
従って、製品の引渡時点で設定された価格が、将来の価格変動等を考慮した価格であり、その時点における取引価格が回収すべき信頼性を持った見積額であると合理的に判断できる場合には、製品の引渡時点で収益を認識できると考えられます。
ここで取引価格が回収すべき信頼性を持った見積額であると合理的に判断できる場合とは、例えば、①頻繁に取引が実施され、また、取引量が十分に確保されている市場において、継続的に公表されている相場に近似している、②前会計年度に適用された年間契約価格に対して一定の価格変動水準を考慮する等の過去の取引事例によるデータに基づいていることが挙げられます。
また、見積額と確定額の差額については、後日売価が確定し修正された時点で、売上高の修正処理を実施することになると考えられます。
「納税者の値引き行為による赤字増値税専用発票発行に関する問題の通知」国税函「2006」1279号より、市場価格の下落により、販売者から価格の優遇や補償などを受ける場合に赤字増値税専用発票の発行ができる旨規定されており、購買者は主管税務機関に申請書を提出し、同機関の申請書の審査、赤字増値税専用発票の通知書を発行後、販売者がこの通知書に基づき赤字増値税専用発票を発行し、売上増値税から相殺することになります。