2010年度の企業所得税確定申告や連合年検と呼ばれる関係政府機関への年度更新手続きが終わり、気が付くと早くも今年の半ばを過ぎていました。江蘇省蘇州地区の工場では停電による稼働日調整が行われるなか、暑い季節を迎えています。
今月号では昨年度の会計監査結果を振り返り、会社側で次回へ備える重要項目として、在庫管理の問題点を取り上げます。これは多くの工場が向き合っているテーマです。
会社により異なりますが、在庫の入出庫記録や払出し単価計算には管理ソフトウェアを利用しています。もちろん、専用ソフトまでは導入せずに汎用の表計算ソフトを活用するケースも多いです。
これらの電算処理化には、短時間での集計作業、ケアレスミス発生の防止、省力化、経営管理資料への容易なデータ転用など、幾つもの業務メリットが挙げられます。しかし、一方では複数システム間のデータ不整合という「落とし穴」に陥るリスクを忘れてはなりません。実際の監査現場において、データを直接に連動させていない在庫管理システムと財務会計システムの集計結果が大幅に違っていた事例が見られました。現地法人としては本社への決算報告期日が迫っているタイミングでの差異検証は困難が伴う場合が少なくありません。
それでは、手書きにて管理帳票や会計帳簿を作成している訳ではないのに、何故、この様な問題が生じるのでしょうか?
それには一般的に以下の原因が考えられます
☆ 会計年度の途中に、在庫管理システムの新規導入または別システムへ切り替えた。
その時点ではオペレータの処理能力が運用レベルに達しておらず、適切なデータが作成されない状況が
続いていた。
☆ 管理システムに変更は無いが、退職を理由に操作担当者が交代していた。
新任担当者へは十分な業務引継ぎがなされておらず、過去の経緯が分からないまま自己の判断により
日々の業務を進めており、データの連続性が保たれなかった。
☆ 全てのシステムと担当者に変更は無いが、期中に相互で残高照合作業を行っていなかった。
その為、一方の担当者にてデータ入力漏れや間違いが生じていたのが期末時点まで判明しなかった。
これらを見直すと、管理システムを使用するのは担当者であり、その担当者へ必要な社内訓練が実施されていないこと、また、適時に情報が伝達、検証されていないことの内部統制上の欠陥が浮き上がって来ます。
数カ月後には2011年度の予備監査が実施されます。その前に今一度、全社的に在庫管理の問題点を洗い出し、解決までの具体的な期限を設定して改善に取り組まれることをお勧めいたします。