日中クロスボーダーM&Aコラム
「経済補償金について」
Q:M&Aを実施する場合、従業員に経済補償金を支払う必要があるかご教示下さい。
A:M&Aは企業を包括に譲渡します。勿論その中には、従業員も含まれていますので、原則経済補償金の支払いは不要です。但し、従業員からすれば買手が中国内資企業が買収するのであれば、重要な労働条件の変更に該当しますので、従業員の要求により支払う場合が多いです。
解説:
M&Aとは、企業の有機的一体となっている資産(積極財産、消極財産、オフバランスの資産)を包括的に売買する事を言います。勿論従業員も引き継がれますので経済補償金の支払いは不要です。
しかし、日中間のM&A(日本の現地法人が譲渡企業、中国の内資企業が買手企業)では、法人形態が外商投資企業から内資企業に変更になり、従業員からすれば重大な労働条件の変更になる可能性があるとして、経済補償金の支払いを求めて来る場合があります。
1.合意解除と労働契約の終了とでは考えが違う
現地法人を清算する場合、清算により企業自体が無くなりますので、労働契約も無くなります。その場合の経済徐賞金は、前年給与総額の1か月分×勤続年数で計算します=N(2007年12月31日以前に契約された社員を除きMAX12か月。日系現地企業では、Nだけでは良いのかという考えがあり、通常N+1カ月程度支払っているのが現実です。
M&Aの場合は、労働契約は引き継ぐ事が原則ですので、従業員説明会を開催し、N+2~3カ月分を支給している企業が多いです。
2.現地法人の対応
上記の通り、M&Aの場合、従業員を買手が引き継ぐ場合は、基準日の経済補償金の金額(N)を譲渡対価から控除します。
譲渡者側で処理する場合は、譲渡契約前に従業員との合意解除の話し合いを弁護師事務所を通じて行い、サインを入手して事前に支払う事になります。
合意解除を取り付ける前には、地元の労働局、上級工会(労働組合)、公安(警察)に事前に説明を行い理解を得ておくべきです。
そして、説明会のみ全員の前で行いますが、以降は個別に交渉を行った方が良いかと思います。それは、数名の精鋭化した従業員の扇動に乗ってしまわない為です。