日中クロスボーダーM&Aコラム
「清算と持分譲渡の違いを教えてください。」
Q:清算と持分譲渡では、どのような違いがあるか教えてください。
A:貴社の対象企業の「畳み方」と「手取額」が異なります。
解説:
貴社が中国事業からの撤退を決断されたとき、その撤退方法として「清算」か「持分譲渡(M&A)」の選択肢があります。相違点について説明します。
1.外形的な違い
(1)清算: 貴社は資産の換価処分、負債の支払いを済ませた残余金により投資を回収する方法です。 清算手続スケジュールを立て、対象会社の株主会決議、現地当局への申請、取引先と従業員への通告、経済補償金の支払、現地当局(工商局、税務局ほか)との手続き、対象企業の資産・負債の整理、税務清算・清算監査の実施、残余財産の処理を順次進めていきます。
(2)持分譲渡: 持分譲渡は、貴社が中国に投資した対象会社を買手に譲渡する事により、投資額を回収する方法です。対象企業は買手に継承され出資者が変わる事になります。 これは不動産に例えると「オーナーチェンジ」に当たります。
2.手取額の違い
(1)清算: 換価処分資産に土地使用権が含まれている場合に、土地増値税などの課税を受けます。土地使用権など値上がりする資産がなかれば、原則的には簿価純資産を下回ります。
(2)持分譲渡: 譲渡対象企業の簿価純資産を起点に、顧客資産などが価値に加算されますので一般に手取額は簿価純資産を上回り、清算よりも有利になります。
3.その他の違い
対象企業の存在が無くなる「清算」に対して、「持分譲渡」では法人が残りますので、以下の様な違いがあります。
(1)顧客ベースや技術、製品・商品の継承: 買手企業が譲渡対象会社の何処に価値を置いて買収を決めたのかによって濃淡は出ますが、対象会社の顧客資産や技術、製品・商品は、基本、人材は継承され、更に発展していく可能性もあります。
(2)中国市場でのプレゼンスの継続: 貴社が持分譲渡後も、譲渡対象企業の社名や製品ブランドの継続使用を有償・無償を問わず認めた場合、貴社の中国市場でのプレゼンスは継続します。