【2026年3月】2026年1月施行「増値税法実施条例」の解説(第2回)~増値税法・本実施条例の施行下で、実務上に大きな影響を与える仕入税額控除の新ルールを、補充規定と共に解説~

本稿は、JPマイツ通信2026年2月号に続き、増値税法実施条例[i](以下“本実施条例”と表記)の解説として、仕入税額控除をテーマに取り上げます。尚、本テーマを含み、後述の通り、増値税法、本実施条例の補充規定が相次いで公布されており、本稿でも概要を説明します(次回が「本実施条例の解説」シリーズ最終回です)。
本稿と共に、既往JPマイツ通信の以下等[ii]を併せてご参照ください。
➢【2023年11月】増値税草案(第二稿)と現行制度や日本の消費税との違いを説明
➢【2023年5月】中国の増値税制度と消費税インボイス制度を比較!
➢ 【2025年2月】増値税法が公布:暫定条例、草案、現行制度や日本の消費税との違いを説明)
➢【20262月】20261月施行「増値税法実施条例」の解説(第1回)~(中略)クロスボーダー取引を中心に解説~
 

1.増値税法[iii]施行後も踏襲される仕入税額控除の基本的な枠組みと本実施条例における新たなルール

まず、従前のJPマイツ通信等において、繰り返し、2026年1月より施行された増値税法は現行制度をほぼ踏襲しており、施行の影響は限定的とお伝えしてきました。

仕入税額控除も同様であり、一例として、日本の“課税事業者”に相当する一般納税人の場合、日本の適格請求書(所謂 “消費税インボイス”)に相当する発票を税務証憑として、売上増値税額から仕入に係る増値税額を仕入税額控除し、差額を納付する等の現行の枠組みは、何ら変わりません。

但し、同法の補充規定である本実施条例には実務的な変更が複数、見受けられ、“500万元限度額ルール”等の新たな仕組みが設けられるなど、特に留意が必要です。仕入税額控除に係る詳細は以下の通りです。

  1. (1)混合用途時の取扱い
    1. ①固定資産以外の貨物・サービスを購入した混合用途時の取扱い
    2. 一般納税人が固定資産以外の貨物・サービスを購入し、当該仕入を簡易計算方式・免税・非課税取引に共用したものの、これらの仕入税額控除(不可部分)を区分できない場合、売上または収入割合で按分し、当期の控除不可額の算定が求められます。特に、翌年1月の納税申告期間内に年間の精算を行わなければならない点は、変更事項であり、注意が必要です。
    3. また、既に控除した仕入税額について、後に用途が変わり免税・非課税の取引等に該当した場合、当該取引に対応する仕入税額を当期の仕入税額から控除しますが、金額が確定できない場合には、当期の実際の原価に基づき控除すべき仕入税額を計算します。
    4. また、これらの具体的な計算方法は、後述の13号公告[iv]に規定されています。
    5. ②固定資産・無形資産・不動産等「長期資産」の混合用途時の取扱い
    6. 本論点は、本実施条例において特に実務上の影響が大きい項目です。
    7. ➢単独項目で取得原価が500万元を超えない長期資産:
      1. 対応する仕入税額を全額売上税額からの控除が可能
      ➢単独項目で取得原価が500万元を超える長期資産:
      1. 購入時に仕入税額を全額控除し、その後、混合用途としての使用期間中に、調整年限に基づき、売上税額から五種類の控除不可項目(右表の通り)に対応する控除不可の仕入税額を計算、毎年調整
      1. 五種類の仕入税額控除不可項目
        ✔簡易計算方式による課税項目
        ✔免税取引項目
        ✔本実施条例第22条で定義された仕入税額控除不可の非課税取引
        ✔集団福利(従業員福利厚生)
        ✔個人消費
    1. 増値税法では基本法との性質上、原則規定に止まり、今回、混合用途の具体的な控除方法は、本実施条例により明確化されました。すなわち、(取得原価が)500万元以下では従来同様に、仕入税額を全額控除できる一方で、(同)500万元超の場合には購入時には全額控除できるものの、その後、実際の用途に応じて、下述の「調整年限」に従い、毎年控除不可部分を調整する仕組みが導入されました。
    2. 尚、具体的な計算方法及び「調整年限」は、13号公告と同日に公布された後述の、“長期資産仕入税額控除暫定弁法(以下“15号公告”と表記)[v]に規定されています。
  1. (2)非正常損失の取扱い
  2. また、仕入税額控除を不可とするものに“非正常損失”が挙げられます。本実施条例では現行制度をほぼ踏襲し、 “非正常損失”を“管理不善による貨物の盗難・紛失・腐敗変質や法令違反による貨物或いは不動産の没収・破棄・取り壊し等を指す”とし、これらに対応する仕入税額控除が認められません。
  3. 更に、今回、対象範囲をより明確化し、具体的に以下等を挙げています。
  4. 非正常損失の対象となる仕入貨物、および関連する加工・ 修理・補修役務、交通運輸役務
    )仕掛品・完成品に使用された仕入貨物(固定資産を除く)、加工・修理・補修や交通運輸役務
    ➢( )不動産、及び当該不動産に消費された仕入貨物と建築役務
    ➢( )不動産の建設仮勘定に消費された仕入貨物 と建築役務。不動産の建設仮勘定には、納税者が新築・改築・増築・修繕・装飾する不動産を含む。

 

2.13号公告

13号公告では、上述の通り、固定資産以外の混合用途時に一般納税人が仕入れを簡易計算方法・免税・非課税取引を共用し、仕入税額控除の不可部分を区分できない場合の、計算方法は以下の通りです。
【計算式1】当期の控除できない仕入税額
=当期の区分できない仕入税額の全額
 ×(当期簡易計算方法の課税項目の売上+当期免税増値税項目の売上+当期控除不可の非課税取引収入
                    当期全部売上額+当期全部非課税取引収入
また、その他、一般納税人が取得する各種取引における控除可能な仕入税額の算定方法は下表の通りです。
取引項目 取得すべき発票・証憑 控除可能な仕入税額・留意事項
自動車(机动车)の購入 自動車(机动车)販売統一発票 発票に記載された増値税額
国内旅客輸送サービスの購入1
➢電子発票(鉄道電子乗車券、航空運送電子客票行程単)
➢旅客の身分情報が記載された道路・水路等のその他の客票
➢発票に記載/含まれる増値税額
➢票面金額 ÷(1+3%)× 3%
道路・橋・閘門(ゲート)通行サービスの購入1
➢有料道路通行料の増値税電子普通発票、或いは「通行費」表示のある電子発票
➢橋・閘門(ゲート)の通行費発票
➢発票に記載された増値税額
➢発票金額 ÷(1+5%)× 5%
簡易計算方式・免税・非課税の用途と共用(但し、仕入税額の区分が不可)➾上表【計算式1】の通り。
完税証憑2
(による仕入税額控除)
書面契約、支払証憑、海外事業者の対帳書(取引明細の照合書類等)或いは発票 完税証憑上の税額(規定通りに、当該資料を提供しない場合、控除不可)
*1:増値税専用発票を取得した場合を除き、上表の通り。 / *2:例えば、海外からの役務や輸入貨物の購入時に取得する。
尚、13号公告は、資産再編時や一つの課税取引内に2つ以上の税率がある場合の取扱い等も、定めています。

 

3.15号公告

15号公告は全24条から構成され、一般納税人が取得した長期資産(固定資産・無形資産・不動産)」に係る仕入税額の控除・調整方法を体系的に定めています。増値税法、本実施条例を踏まえた長期資産には、購入、自社による建造、研究開発、投資の受入、寄付、債務弁済などあらゆる方法で取得した資産を含む一方で、リース資産や仮設建物、不動産開発企業が自社で開発し、在庫として扱う不動産は含まれない、と規定しています。

長期資産「調整年限」
✔不動産・土地使用権:20年
✔航空機・列車・船舶:10年
✔その他:5年

また、上述1-(1)-②の、取得原値500万元を超える長期資産「調整年限」は右表の通りであり、平均法で当該資産の純額を算定します。混合用途の期間中は、上述の五種類の仕入税額控除不可項目を、2(福利・個人消費)、②3つ(簡易計算方式・免税・非課税)に大別し、按分して調整額を求め、翌年1月に控除不可額を纏めて申告調整します。資産の純額や調整額には具体的な計算式が示されています。

 

4.留意事項

今回の、本実施条例における仕入税額控除の取扱いは、実務面では影響が生じ得ます。また、本稿では取上げませんでしたが13号公告、15号公告等と同日公布の“14号公告”(増値税予納税額管理弁法)[vi]も公布されるなど、補充規定も相次いで公布されていますので、関連規定にもご留意ください。本稿は、次回を最終回として、本実施条例と適宜、関連補充規定も含めて解説を行います。

 

 

 


[i] 原文URL:中华人民共和国增值税法实施条例_税务_中国政府网

[ii]マイツグループのニューズレターは右記URLの通り。URL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ

[iii] 原文URL:中华人民共和国增值税法__中国政府网

[iv] 原文URL:关于增值税进项税额抵扣等有关事项的公告

[v] 原文URL:国家税务总局政策法规库 (長期資産仕入税額控除の暫定弁法)

[vi] 原文URL:国家税务总局政策法规库  (増値税予納税額管理弁法の公告、財政部・国家税務総局公告2026年第14号)