【2026年2月】2026年1月施行「増値税法実施条例」の解説(第1回)~日本本社・現地法人に関係の深いクロスボーダー取引を中心に解説~

PDF版はこちら →China Info JPマイツ通信 2026年2月号

 

2026年1月1日施行の増値税法[i]に伴い、増値税法実施条例[ii](以下“本実施条例”と表記)が2025年12月25日付け公布・2026年1月1日付けにて施行されました。

本実施条例は、(1993年12月公布の「増値税暫定施行条例」を暫定法ではなく恒久法化した)増値税法と同様に、建付けこそ増値税暫定施行条例実施細則(以下“旧実施細則”)[iii]の継承的な規定です。

しかし、旧実施細則は営業税と増値税を統合する“営改増”改革の2016年 5月全面適用によって、実務的には財税「2016」36号[iv]等による現行制度に上書きされています。従い、実務面での影響を分析するとすれば、寧ろ、財税「2016」36号等との比較が必要となります。

本実施条例は、現行制度を踏まえた増値税法の補充規定であり、現行制度との実質的な乖離は無いものの、財税「2016」36号を始めとした各種の政策性規定を統合すると共に、規定の整理や詳細化を図っています。

また、仕入税額控除の厳格化など一部項目は、今後の実務にも影響を与え得るものです。従い、本実施条例の理解を深める為に、複数回に分けて解説を行い、本稿は、その初回となります。

本稿と共に、既往JPマイツ通信の以下等[v]を併せてご参照ください。
➢【202311月】増値税草案(第二稿)と現行制度や日本の消費税との違いを説明
➢【20235月】中国の増値税制度と消費税インボイス制度を比較!
➢【20252月】増値税法が公布:暫定条例、草案、現行制度や日本の消費税との違いを説明

 

1.本実施条例の概要

本実施条例は、6章・54条から構成されています。
尚、意見聴取稿から3条が統合・削除されましたが、大幅な改変はありません。

 

2.重要項目の解説

➢クロスボーダー取引(ゼロ税率vs免税)
増値税では輸入取引に加えて、役務・無形資産取引の販売側、購入側のいずれかが中国国内にいれば原則、課税対象取引となります。すなわち、日本企業など海外事業者が中国企業に役務提供する際にも、提供役務が中国国内で費消される限り、課税取引となる点が、日本の消費税とは大きく異なります[vi]
また、本実施条例においても、ゼロ税率=対応する仕入税額控除・還付が可能、免税=仕入税額控除が不可との、従来からの建付けは変わりません。(従い、日本の輸出取引“免税” [vii]は、中国では“ゼロ税率”に相当します。)
この為、跨境(クロスボーダー)取引において、輸出貨物、跨境での役務・無形資産の提供でのゼロ税率か免税かの適用範囲の明確化が非常に重要です。

 

但し、本条例と財税「2016」36号(付属文書4)では建付けが異なり、留意が必要です。財税「2016」36号では、クロスボーダー取引におけるゼロ税率と免税の適用項目を、それぞれ列挙しています。一方、本実施条例では、ゼロ税率では以下の通り詳細な列挙が図られていますが、免税項目は特段の列挙が無く、現時点ではその具体的範囲は財税36号等を準用する形です。

【ゼロ税率の適用範囲】

輸出貨物
(第8条)
税関申告し実際に国境を離れ国外単位或いは個人に販売される貨物、及び国務院が規定する輸出と看做される貨物を指す。
クロスボーダー役務・無形資産の提供
(第9条)
国内単位或いは個人がクロスボーダーで以下の役務・無形資産を販売する場合、税率をゼロととする。
(一) 国外単位に対し販売し国外で完全に費消される研究開発サービス、 エネルギー管理契約サービス、デザインサービス、放送・映画・テレビ番組制作・ 配給サービス、ソフトウェアサービス、回路設計・テストサービス、情報システム サービス、ビジネスプロセス管理サービス、オフショア・サービス・アウトソーシ ング業務。
(二) 国外単位に対して譲渡され国外で完全に使用される技術。
(三) 国際運輸サービス、宇宙運輸サービス、対外修理・補修サービス。
また、上表の通り、(対応する仕入れ税額控除が可能な)ゼロ税率の適用を受ける為には、提供役務や使用技術が国外で完全に費消・使用される点が、強調されており、留意が必要です。

 

ゼロ税率を適用時の仕入れ税額控除
一方、輸出やクロスボーダー役務時にゼロ税率を適用された場合の対応する仕入税額の控除の手続きは、実務的にも、下表の通り、従来と同様です。
ゼロ税率
(第47条)
➢納税者の貨物輸出、或いはクロスボーダー役務・無形資産の販売により増値税法第33条の規定に基づき輸出還付(免 税)の申告手続きを行う場合は、「免除・控除・ 還付」方式或いは「免除・還付」方式により還付(免税)額を計算し、還付(免税)の手続きを行う。*以下“還付(免除)”を“還付”と表記

また、以下の状況において、本来、ゼロ税率=対応する仕入税額控除・還付が可能であっても増値税の納付を求めています。

①   納税者が還付方法或いは増値税免税を適用する輸出業務は、規定の期限までに申告が必要。期限経過後も申告しない場合は、規定に従い国内向け販売とみなされ、増値税を納付する。(第48条)
②   納税者が還付の適用対象となる輸出業務について、還付を 放棄し、増値税免税或いは増値税納付を選択可能。還付を放棄した日の翌月から、当該還付対象となる輸出業務は、増値税免税か、或いは規定に基づき増値税を納付する。(第49条)

留意点として、上記①において納税者が委託方式での貨物輸出において、委託代理輸出の手続きを行う場合、委託者が輸出還付、増値税免税或いは増値税納付の申告手続きを行い、委託代理輸出の手続きを行わない場合は、輸出貨物の発送人(販売者)が規定に基づき増値税を申告納付します。

また、上記②の還付或いは増値税免税を放棄した輸出業務については、36か月間、 再度還付或いは増値税免税の適用が不可となっています。

 

3.留意事項

本実施条例は、財税「2016」36号及びその他関連規定を、整理・統合した規定ですが、今後、クロスボーダー取引における免税項目の詳細化や、ゼロ税率の適用における更なる補充規定が公布される可能性もあります。
また、本稿では、増値税のゼロ税率と免税適用に絞り解説しましたが、仕入税額控除政策の厳格化や混合取引にかかる納税対応など、他の重要項目も散見されるなど、次回も本実施条例の解説を行います。

 

 

 

 


[i] 原文URL:中华人民共和国增值税法__中国政府网

[ii] 原文URL:中华人民共和国增值税法实施条例_税务_中国政府网

[iii] 原文URL:国家税务总局政策法规库

[iv] 原文URL:财政部 税务总局关于全面推开营业税改征增值税试点的通知__2016年第19号国务院公报_中国政府网

[v]マイツグループのニューズレターは右記URLの通り。URL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ

[vi] 増値税法(第4条)、本実施条例(第4条)等を、併せて参照されたい。

[vii] URL: No.6551 輸出取引の免税|国税庁