【2025年5月】5月31日期限!中国の企業所得税確定申告を日本の制度との比較も含め、詳細解説!

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毎年、この時期には年度業務(年度監査、企業所得税確定申告、個人所得税確定申告(必要のある場合)、工商公示及び連合年検等)や、決算承認等に対応中の現地法人/日本本社も多いかと思います。毎年、マイツグループでは、各種ニューズレターにて、当該に年度業務を各方面から解説しており、今年も既に華南、大連、JPマイツ通信にて関連情報を提供済です。過年度情報も含め、宜しければご参照ください[i]

本稿では、企業所得税確定申告の制度及び税額の算出方法についての理解を深めるべく、日本の法人税確定申告の制度と比較しつつ、解説します。

 

1.企業所得税確定申告 VS 法人税確定申告の枠組み

中国の企業所得税確定申告と日本の法人税確定申告の主要な枠組みは下表の通りです。
中国の企業所得税確定申告[ii] 日本の法人税確定申告[iii]
課税年度(課税対象期間) 1月1日~12月31日(企業所得税法[ⅳ]により上記のみ) 事業年度(1年間を超えない時は当該期間)
申告期限 納税年度の終了後5ヵ月(延長不可) 事業年度終了日の翌日から2ヵ月(但し特例申請により1ヵ月申告延長可)
予定納税/中間申告の期限 原則、四半期末の翌月15日 事業年度6ヵ月経過後2ヵ月
繰越欠損金の補填期間(控除限度額)
5年(期間内であれば全額) 10年(青色申告法人且つ中小法人等:同左、同法人等以外の法人:50%)
尚、確定申告とは直結しないものの、中国では無申告・過少申告や虚偽申告等に対し、以下の通り、延滞利率や罰金のペナルティが重く、更に延滞利率の計算期間も日本とは異なり制限がない等、要注意です[v]
■延滞利率:一日あたり05% (年率18.25%)
■罰金:要納税額の50%~5倍(500%)

 

2.企業所得税の確定申告表及び課税計算方法

次に、企業所得税の確定申告表[vi]について説明します。確定申告表の各項目は巻末表の通りですが、納税者は、納税者基礎情報表(A000000)と納税申告主表(A100000)の提出が必須です。加えて、該当する納税項目に従って、各種の明細表等(法人税申告書の各種別表に相当)を添付、申告します。

上述/右表の納税申告主表(A100000)は、法人税“別表1 「各事業年度の所得に係る申告書」”に、また納税調整項目明細表(A105000)[vii]は法人税の“別表4「所得の金額の計算に関する明細書」”に相当[viii]しますので、本稿では当該二表を例に挙げて企業所得税の課税所得の計算方法を説明します。

(1)納税申告主表(A100000
同表は当該年度の納税/還付税額及び申告内容を総括的に示しています。
行番号順に、①利益総額(1~18)⇒②課税所得額(19~28)⇒③課税納税額(29~36)⇒納付(還付)税額(37~45)を算出します。すなわち、①会計上の利益を、次に②税務上の加算・減算調整をして課税所得を、最後に③適用税率を乗じた納税額に、当該年度の予納税額の控除や外国税額控除等の税額調整を行い納付/還付税額を算出する為、枠組み的には日本と特段の差異はありません。
(2)納税調整項目明細表(A105000) 
納税調整項目明細表は、日本の別表4に相当します。別表4は当期純利益から加算(益金算入・損金不算入・減算(益金不算入・損金算入)調整された仮計に更に調整を加えて、所得/欠損金額を算出します。
一方、中国の同明細表は、“1收入類調整項目”、“2控除類調整項目”、“3資産類調整項目”、“4特殊事項調整項目”、“5特別納税調整課税所得”、 “6その他”の区分ごとに計算し、調整増加額/調整減少額が算出されますので、両表共に、どのような税務調整を行ったかが一覧できる、との重要性は同じです。以下に、納税調整項目明細表(A105000)に記載すべき代表的な調整項目を列挙します[ix]
収入類調整項目
  1. みなし販売収入:非貨幣性の資産交換や寄付等の収入。公正価値により課税所得を認識し、A105010にも記載。
  2. 不徴税収入:財政支援金等の“不徴税收入”は、課税収入から控除し、A105040にも記載。

【控除類調整項目】

  1. 罰金、納税延滞利息:全額損金不算入。
  2. 従業員福利費支出:賃金給与総額の14%を超える部分は損金不算入
  3. 従業員教育経費支出:賃金給与総額の2.5%(超過部分を以後の納税年度に繰越控除可能)、との損金算入限度額を超過すれば、損金不算入であり、A105050 にも記載。
  4. ✓交際費:発生額の60%若しくは当年度の売上(営業)収入の0.5%(の低い方との損金限度額を超過すれば、損金不算入
  5. ✓広告宣伝費:原則、当年度の売上(営業)収入の15%(超過部分は以後の納税年度に繰越控除可能)との損金算入限度額を超過すれば、損金不算入であり、A105060にも記載。

また、【資産類調整項目】の例として、加速償却や一時償却など税務上と会計上の差異がある固定資産の損金(の優遇)処理や、未承認の減損引当金支出(損金処理不可)等の、税務調整が該当します。

尚、中国の税法上でも罰金等は損金不算入などの日本と原則的に同様の取扱いがある一方で、例えば、交際費や広告宣伝費の損金計上の可否や限度額(及び限度額の有無)等の差異も見られます。また上記以外にも、中国では法人間の管理費用は原則、損金不算入、更に発票(日本の適格請求書に相当)が無い支払いは全額損金不算入等、日本とは異なる取扱いですので、注意を要します。

 

3.まとめ

日中を比較すれば、総論的な枠組みや考え方に大きな差異はないものの、例えば、損金不算入項目や限度額の違い、繰越欠損金の補填期間等の各論的には差異も見られます。また罰金や延滞利息等の取扱いが非常に厳格な点にも留意が必要です。

従い、日本本社としては、現地法人の年度業務に対する期限遵守は勿論のこと、現地法人の税務コンプライアンス・リスクを低減すべく、期中の会計・税務処理の適正性にも留意すべきでしょう。

 


 


[i]    マイツグループの各種ニューズレターは、右記URLを参照のこと。URL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ

[ii]   右記URL等を参照のこと。URL:关于印发《企业所得税汇算清缴管理办法》的通知

[iii] 右記URL等を参照のこと。URL:令和6年版 法人税のあらましと申告の手引|国税庁

[iv]  企業所得税法(第53条)を参照のこと。URL:国家税务总局政策法规库

[v]    原文URL:中华人民共和国税收征收管理法_中国人大网

[vi]   原文は右記URL等を参照のこと。URL:国家税务总局关于优化企业所得税年度纳税申报表的公告

また華南通信2025年3月号、大連通信2025年4月号も併せてご参照願いたい。

[vii] 右記URL等を参照のこと。URL:《纳税调整项目明细表》及填报说明

[viii] 下記URL等を参照のこと。
URL:r01-05.pdf/令和6年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和6年4月1日以後終了事業年度等分)|国税庁

[ix]  控除類項目にかかる損金算入限度額の原文URL: 中华人民共和国企业所得税法实施条例__增刊2019·1国务院公报_中国政府网

 

巻末表:《企業所得税確定申告年度納税申告表 リスト》

出典URL: W020250120501717151586.doc