【2025年1月】2024年の中国の主要な法改正・各種の変更事項と、2025年(以降)に留意すべき各種事項のまとめ

PDF版はこちら →China Info JPマイツ通信 2025年1月号

 

2024年には、改正会社法の施行を始めとした各種の法律法規の改正や、外商投資法や個人所得税法の関連規定に定められた移行措置の期限到来、更に訪中ビザの免除など、各種の大幅な変更がありました。このうち、既に期限到来済の事項などは、2024年中に対応を完了された企業も多いかと思いますが、一部には2025年以降に対応を要する、若しくは影響が生じ得る項目があります。また、万一、2024年中に完了すべき対応を未済の場合、どのようなリスクや問題が生じ得るかを把握することも肝要と考えます。

従い、本稿では、年頭にあたり、2024年における主要な改正・変更点(今後の開始を含む)を列挙すると共に、更に2025年にも影響を及ぼし得る項目や未済のリスク等、特に、注意喚起したいと思います。

 

1.2024年における主要な改正・変更点(今後の開始を含む)

対象(中国現地法人、日本本社、日本国籍者)毎に纏めた主要な改正・変更点は、下表の通りです。
(尚、各詳細はマイツグループ・ニューズレター[i](JPマイツ通信、上海通信等)の各トピックを、ご参照願います。)

 

【中国現地法人にかかる変更点】

“*”項目は次頁にて解説、補足説明

関連分野 対象項目 (開始 / 終了時期) 項目概要 / 留意事項
外商投資法 同法及び同実施条例[ii]の移行期間終了
(~2024年12月31日)
旧外資三法の廃止に伴う変更事項の未済(Ex.合弁企業の旧法下の機関設計のまま維持)等の状況において、他の登記事項の申請を手続きしない
個人
所得税法
6年ルールを含む財政部・国家税務総局公告2019年第34号[iii]にかかる移行期間終了
(~2024年12月31日)
2019年以前より駐在し“6年ルール”に該当する駐在員が2024年中にタックスブレイクしなかった場合、2025年以降は全世界所得課税として中国国外源泉所得も合算申告する必要あり
会社法
改正会社法[iv]の施行
(2024年7月1日~)
新たな機関設計の追加、出資払込義務の強化、個人に対する罰則強化、無償減資の容認ほか
社会保険法
/
就労ビザ
✓2019年9月発効・日中社会保障協定[v]の初回期限の到来

✓工作許可証の社会保障カードへの統合[vi]
(2024年12月1日~)

✓養老年金の納付免除の適用期限(5年)に対して、延長申請により、更に原則として5年を超えない期間の納付免除待遇の享受が可能に

✓工作許可証の廃止・統合に関しては詳細を後述

法定退職年齢の引上げ ✓段階的な法定退職年齢の引上げに関する弁法[vii]の公布
(2025年1月施行、移行措置が開始)
15年の移行期間を設けて、法定退職年齢について、男性は63歳に、女性は55歳と58歳に引上げ

【日本本社に対する変更項目】

改正監基法600 ✓日本の監査人による、海外のグループ監査人(Ex.中国の会計事務所)に対する品質管理の確認・検証の厳格化[viii]

(日本の監査人の規模に応じて、2024年度/2025年度より適用)

✓日本の監査法人の監査品質レベルに見合う、現地会計事務所への変更をクライアントに要請する可能性あり

*日本本社側で非上場等により、監査を受けない場合、対象外

グローバル・
ミニマム課税
✓所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)に基づく、国際最低課税額に対する法人税の創設[ix]

(3月決算の場合、2025年3月期が適用初年度)

✓子会社の所在地国の実効税率が基準最低税率(15%)を下回る場合には、親会社の所在地国で同税率まで上乗せして課税

*但し、年間総収入金額7億5,000万ユーロ(約1,200億円)以上の多国籍企業が対象

【日本国籍者に対するビザ政策の変更】

中国入国時のビザ免除政策 ビザ免除国の更なる拡大と入国政策の最適化に関する通知[x]

(2024年11月30日~2025年12月31日)
*但し、期限延長される可能性が高い(?)

日本の一般旅券を所持し、商業・貿易、観光、親族訪問、交流・訪問、トランジットを目的とする、中国に30日以内に滞在する人員に対し、入国ビザを免除

 

 

2.2025年(以降)における留意点

2024年の変更点を受けて、まず特に留意すべき事項に、社会保険関連のうち、工作許可証と社会保障カードの統合が挙げられます。
既往の通り、2011年7月1日付け「社会保険法」や関連規定等により、原則、外国籍人員に中国社会保証制度への強制加入と社会保険料の支払いが求められる一方、一部地域では任意加入が実務的に容認されています。
しかし外国籍人員の合法的な就業ステータスを物理的に示す、工作許可証カードが廃止され、社会保障カードへの統合により、任意加入の容認地域においても、いよいよ、強制加入が求められる可能性があります
尚、マイツグループでは、広州市(強制加入の要求地域)における新規取得の実務運用では、Zビザでの入国後、健康診断を受けた後、(従来の工作許可証の取得手続きを不要として)居留許可証の取得手続きに移行すると共に、社会保障APPのアカウント登録により電子社会保障カードの取得ができており、広州の統合上の実務運用では、あくまでも工作許可証の代替手続きの性質が強い模様です。
しかし、特に任意加入を容認する地域では、今後の実務運用を慎重に注視すると共に、状況に応じて迅速、適切な対応が求められると考えます。
次に、個人所得税の経過措置ですが、2020年以降に駐在を開始して、今後中国の居住者としての期間が6年目を迎える駐在員が7年目以降の全世界所得課税を回避する為には2025年以降の6年目(迄)のタックスブレイクが必要となり、引続き、駐在員の中国滞在期間及び日数の把握、管理に留意すべきと考えます。
一方、もし中国勤務に対する給与所得以外に特段の所得が無いのであれば、“中国国内源泉所得=全世界所得”となりますので、タックスブレイクの要否は、駐在員の状況を踏まえた個別の判断もあり得るかと思います。
また、会社法については、大幅な改正が加えられました。
このうち、会計・税務的な観点から1点だけ、挙げるとすれば、欠損補填を目的とする無償減資が、資本準備金の取崩しや減資の手順と共に容認された点が大きな変更事項と言えます。
但し、当該変更は会社法の変更に止まり、少なくとも現時点では税法上の関連規定が変更された訳では無い為、依然として無償減資に対して企業所得税法上の債務免除益(益金)となる可能性があ繰越欠損金の範囲内であれば納税は生じないものの留意が必要です。
一方で、上表には無いものの、2025年以降の留意事項もあります。
代表例として、1990年代や2000年代に中国に進出した企業は、独資企業、合弁企業を問わず、まもなく20年乃至は30年の経営期限を迎えます。
昨今の中国経済環境の変化や中国企業の競争力向上、また雇用や駐在員を取り巻く環境の変化等を受け、今後、事業継続➾経営期限の延長か撤退か、もし撤退の場合には清算か持分譲渡(合弁先への売却、MA、MBOか)若しくは有償減資か等、経営判断上の検討やスキームの着手を要する等、重要な経営判断を要する企業も増えると思います。

 

中国では、規定や実務運用の変更が短期の周知期間にて実施されることや、また遡及適用も散見される為、最新動向にご留意ください。また、マイツグループも貴社の経営判断に資する情報提供のみならず、個別スキームの検討やその実行など、グループ一丸となり、本年も幅広にご支援、実施して参ります。


 


[i] 参照URL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ

[ii] 参照URL:中华人民共和国外商投资法实施条例_国务院文件_中国政府网

[iii] 参照URL:关于在中国境内无住所的个人居住时间判定标准的公告_部门政务_中国政府网

[iv] 参照URL:中华人民共和国公司法_中国人大网

[v] 参照URL:各国との社会保障協定及び関係法令|厚生労働省

[vi] 参照URL:首页 – 外国人来华工作管理服务系统

[vii] 参照URL:全国人民代表大会常务委员会关于实施渐进式延迟法定退休年龄的决定_中国人大网

[viii] 参照URL:https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/5-24-0-2-20240124.pdf

[ix] 参照URL:グローバル・ミニマム課税関係|国税庁

[x] 参照URL:关于进一步扩大免签国家范围并优化入境政策的通知