【2024年8月】改正会社法施行に伴う変化について ~出資金の払込期限に係る移行措置に関する規定の解説と、 改正会社法後のマイツグループの設立、清算実務の変化を紹介~

 

PDF版はこちら →China Info JPマイツ通信 2024年8月号

 

2024年7月1日より改正会社法iが施行されました。前回の2018年改正時の小幅な調整とは異なり、新たな機関設計の提示、出資義務に対する履行の厳格化、株主や董事、高級管理職等の個人を含む賠償責任等々、会社のガバナンスのみならず個人にまで影響を及ぼし得る条項も多く見られる大幅な改正となっています。
(マイツグループも草案段階から積極的に各種媒体にて情報発信しており、併せてご参照くださいii。)

更に、7月1日付け公布、施行の、「会社法」の登録資本金登記管理制度の実施に関する規定(以下“第784号規定”と表記)iiiにおいて、改正施行時に出資金の払込未済の企業に対し、移行措置を定めています。
また、マイツグループでは、改正施行日を跨ぎ、現地法人の設立、清算事例を複数、現在進行形にて支援中です。これらの手続きでは、改正会社法を反映した対応を求められており、本稿では第784号規定の解説に加えて、実務の現場から改正施行の状況や影響をお伝えします。

1.第784号規定
第784号規定は改正会社法の公布から間もない2024年2月に意見聴取稿が公表され、その後、改正施行日に合わせて公布、施行されました。同規定は意見聴取稿を概ね踏襲しつつも、改正会社法との重複内容を削除し、全13条から構成されており、以下の出資払込期限に係る移行措置や監督管理措置、法律責任等を規定しています。

➢2024年6月30日(改正会社法の施行)以前に設立した会社について:
有限責任会社:出資払込期限が 2027 年 7 月 1 日から 5 年を超える場合には、2027 年 6 月 30 日までに引受(未払込)の資本金残額の出資払込期限を2027 年 7 月 1 日から 5年以内に調整して定款に記載し、調整後の期限内に全額を支払う

株式有限会社:発起人は 2027 年 6 月 30 日までに引受けた株式の全額を支払う

従い、改正施行前に設立された企業は2027年7月1日を基準日とし、有限責任会社は基準日から起算して5年超の場合には出資払込期限の調整が必要です。すなわち、基準日から5年以内(実質的には改正施行から8年以内)に出資払込期限が到来する場合、本改正による調整が不要となる一方で、基準日から5年超の場合には当該5年以内(実質的には改正施行から8年以内)の払込が必要となります。
一方、株式有限会社は2027 年 6 月 30 日までに全額払込が必要となり、より厳格な取扱いが求められます。

 

➢ その他事項について(監督管理措置、法律責任等を抜粋):
出資期間や登録資本金が明らかに異常である場合、登記機関は会社の経営範囲や経営状況、株主の出資能力、主な事業プロジェクト、資産規模などに基づいて調査・判断し、適時に調整を要求できる

株主が引受、払込した出資額、出資方式、出資期間について、或いは発起人が引受した株式数等について調整する場合、関連情報の発生から20 営業日以内に企業情報公示システムを通じて公告しなければならない

本規定に従って出資払込期限、登録資本金を調整しなかった場合、会社登記機関が是正を命じ、もし期限経過後も是正しない場合、企業情報公示システム上で特記表示し、対外開示する

株主や発起人が本規定に従い、出資金或いは株式資本を払込まない場合、若しくは関連情報を開示しない場合、会社法、企業情報公示暫定条例ivの関連規定に基づき、処罰する

上記の通り、企業登記機関のプラットフォーム上での情報公開を通じた出資払込期限や登録資本金の調整、規範化を進め、また通常、日系企業は当該期限を遵守しており、本規定の影響は限定的と考えます。 但し、補充規定の制定にかかる条項も見受けられており、今後の制定にもご留意ください

 

2. 実務から見た、改正会社法の影響
設立や清算の手続きフロー自体には基本的な変化は無く、改正会社法後も、各種手続きは粛々と進行中です。

(1) 設立手続き
広東省における現在進行中の某事例では、改正施行日直前に当局の標準フォーマット定款が同改正を一部反
映した形にアップデートされました。上記1 の論点も含め、以下等の変更点が見受けられます。
出資払込期限:“設立後5 年以内”若しくは“同5 年以内での任意の払込期限”を記載するよう要求

機関設計:当該事例では、改正会社法(第83 条)の “規模が比較的小さく、又は株主の人数が比較的少ない有限責任会社は、株主の全体一致による同意を経て、監事を設置しないこともできる”との要件に該当し、“監事を設定しない”との選択も容認ほか

本ケースでは、中国マイツグループにより、当局への周到な事前確認等により、設立登記の届出を提出した週に早々と営業許可証を取得し、早ければ8 月中にも出資払込まで完了する見込みです。
対照的に、従業員が300 人以上の有限責任会社の設立時には(旧法と同様に、監事会に従業員代表を含める必要があり)、更に董事会も “監事会を設置し且つ従業員代表を有する場合を除き”、董事会に従業員代表を含めなければならないなどの変更事項に合致するケース等では、注意を要します

(2) 清算手続き
華東地域にて現在進行中の某事例においても、以下等、改正会社法に則り、清算委員会の構成や債権者公告
の方法など、若干の変更が見られます。但し、下図の通り、手続きフロー自体に大きな変化はありません。
清算委員会:董事により構成か、定款の定めや株主会決議により、別途、他の者の選択が可能
➱当該事例では、董事により清算委員会を構成して対応中
【清算:主要な手続きフロー】

本事例も清算委員会の届出が速やかに受理され、その後の手続きを粛々と進行中です。当該ケースを含め、マイツグループの清算手続き代行では、サービス業を例に取ればv、通常、現地法人の解散決定から各種登記の抹消、残余財産の回収まで1 年程度で完了(1 年を要しないケースも散見)しています。

 

3. 留意事項
第784 号規定により、出資義務にかかる移行措置は実質的には改正施行から8 年以内で調整となりましたが、日
系企業は従前から出資払込期限内を遵守しており、本移行措置の影響は限定的と考えます。また、設立や清算の
実務においても、改正法を反映しつつ粛々と手続きを進めており、特段の影響は生じていないとの認識です。
一方で、(従業員が300 名以上の企業など)機関設計への影響や株主や個人に対するリスクと責任、また有償減資
時の税務上の取扱いなど、今後の補充規定や実務運用を注視すべき事項もあります。
尚、清算手続きの補足として、中国からの撤退は“難しい”、“当局が認めない”等、現況を反映しないご質問を時折
受けますが、上述の通り、清算を含む中国からの撤退は“当然に可能”、また“しっかりと残余財産も回収できる”
の認識の下、経営判断をいただければと思います。必要に応じて、マイツグループに是非ご相談ください。

 


i 原文URL:中华人民共和国公司法_中国人大网 (npc.gov.cn)
ii JP マイツ通信「2024 年2 月号」等を参照のこと。マイツグループのニューズレターは下記URL の通り。
URL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ (myts.co.jp)
iii 原文URL:国务院关于实施《中华人民共和国公司法》注册资本登记管理制度的规定_国务院文件_中国政府网 (www.gov.cn)
iv 原文URL:企业信息公示暂行条例_国务院文件_中国政府网 (www.gov.cn)
v 製造業の場合、特に土地使用権や建物の処分や原状回復を求められるケース等もあり、より時間を要する。