※当記事は【2020年1月20日執筆時点】の内容となります。
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近年、沿海部より高い経済成長率を記録し、また現在も日系企業の進出が相次ぐ湖北省・武漢市(概況を後述)で発生した新型コロナウィルスについて、連日のように報道されています。現地では昨年12月から盛んに報道されましたが、感染の拡大が比較的緩やかな状況が続いた為、直近までは落ち着きを見せていた感がありました。一方、日本では本年1月中旬以降に報道が本格化した感があります。 現地ヒヤリングを含め、以下に状況を纏めました。
1. 本稿執筆時点[i]までの主要な状況:
年 |
日時 |
概要 |
2019 |
12月下旬 |
武漢の地元メディアで、肺炎情報が報道され始める |
12月31日
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世界保健機関(WHO)が武漢市衛生健康委員会の以下URLリンクを掲載する形で“病原体及び感染原因等を調査中、感染肺炎の症例は27例(うち重症7例)”等を発表 (URL: http://wjw.wuhan.gov.cn/front/web/showDetail/2019123108989) |
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2020
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1月6日 |
厚生労働省が“中華人民共和国湖北省武漢市における原因不明肺炎の発生について”との注意喚起において“発生数:59例[i]の確定例(うち7例は重症)。死亡例なし。(令和2年1月5日時点。国立感染症研究所まとめ)”等と発表 |
1月12日 |
世界保健機関(WHO)が中国当局より新型コロナウイルスによる肺炎41例(うち重症7例、死亡1例)が確認された等の報告があった旨を発表 (URL:https://www.who.int/csr/don/12-january-2020-novel-coronavirus-china/en/ ) |
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1月14日 |
外務省が海外安全情報“中国湖北省武漢における新型コロナウイルスによる肺炎の発生(その4)”を掲載。(URL:https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2020C011.html) |
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1月16日 |
武漢市衛生健康委員会が2例目の死亡を発表(症例41例[ii]、うち治癒12例、重症5例、死亡2例/URL:http://wjw.wuhan.gov.cn/front/web/showDetail/2020011609057) |
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厚生労働省が武漢に渡航歴のある神奈川県在住30代男性(中国籍)の発症を発表 |
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1月19日 |
武漢市衛生健康委員会が3例目の死亡及び新症例の増加を発表 |
尚、日本では詳細には報道されていませんが、死亡事例の2名共に比較的高齢且つ入院時に他の疾患(腹部の腫瘍と慢性肝病/心肺及び腎機能の異常)がありました。3例目は既往疾患の有無に特段の報道がありません[v]。
直近の患者数の急増や春節期間における中国国内の頻繁な移動に対し、比較的落ち着きを見せていた現地でも警戒感が高まっています。しかし、厚生労働省、WHO及び各種メディアの情報の通り、現時点での感染力や、SARSやMERSと比較した場合の致死率[vi]等に鑑み、今後ウィルスに特段の突然変異などが見られなければ、密接な接触者を除けば感染の可能性は低いと考えられており、適切な予防策と共に冷静な対応が求められます。
2. 弊社によるヒヤリング
現状について、在留邦人と中国企業に勤務する中国人にヒヤリングを行った結果は以下の通りです。
日本の報道を主たる情報源としない中国人コミュニティーでは現状は落ち着いていると複数が回答したが、最近の患者の急増と春節期間の移動には懸念する声も聞かれています。
(1) 在留邦人(武漢在住4年):
春節前(1月24日)より、早めの帰国が目立つ。武漢への再入国の可否を心配する人も見受けられる。
連日、報道を懸念しながら見ており、基本的に外出を控えている。
(2) 中国人(武漢人、ホワイトカラー及び専門職):
Ø 半月以上を経ても感染者の増加もなく、自身も周りも、急増までは落ち着いていた。また、死亡者については、比較的高齢且つ他の病気に以前から罹患しており気にはしていなかったが、最近の患者数の急増には懸念。また患者数の急増後にマスクを買い求める人も増えた。自身も最近はマスクを着用。
Ø 街中や地下鉄でのマスク着用は確かに増えたが、自身も周りも落ち着いていた。しかし、最近の患者数の急増には懸念している。
3. 武漢の概況
新型コロナウィルスで認知度が上昇した感のある武漢ですが、経済的には沿海部に比して堅調な経済成長と、日産やホンダなど自動車産業だけでなく、光ファイバーやIT、AI関連を含め約200社の日系企業が進出する内陸の一大拠点となっています。また、武漢市から車で約</s pan>1時間の距離に孝感市があり、日商産業園を含め、依然として日系企業の新規進出が継続する注目の地域ですので、本稿で併せてご紹介します。
【武漢市の概況】[vii]
[i] 2020年1月20日時点の情報に基づき執筆。
[ii] 59例と41例の差異は、中国以外の発症者数を含むか否かと考えられる。
[iii] 同症例数に海外での発症者数は含まれていない。
[iv] 武漢市衛生健康委員会のHPにおいて、1月16日に4例、1月17日に17例の新規症例の発生がそれぞれ翌日に発表されている。
[v] 当該情報の掲載されている武漢市衛生健康委員会のHPは以下の通り。
URL:http://wjw.wuhan.gov.cn/front/web/showDetail/2020011109036/
[vi] 現時点での致死率は1.5%(SARS9.6%、MERS34.4%(出典:国立感染症研究所(URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja)より)。
[vii] 出典:武漢市政府(2018年国民経済と社会発展統計公報)、各開発区及びJETRO武漢事務所HP等の公表データに基づく。