【2026年1月】重要判例定年年齢到達時の「経済補償金」は支払い不要か?~高裁が下級審判決を破棄。「年金未受給でも定年による契約終了は有効」と確定~

 

 

重要判例定年年齢到達時の「経済補償金」は支払い不要か?
~高裁が下級審判決を破棄。「年金未受給でも定年による契約終了は有効」と確定~

 

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平素より大変お世話になっております。本号では、中国の労務管理において長年の懸案事項であった「定年退職時の契約終了と経済補償金(退職金相当)」に関する最新の重要判例をご紹介します。
「定年年齢には達したが、年金受給資格がない従業員」との契約を終了する場合、会社は補償金を支払う必要があるのか? この点について、企業側に有利な司法判断が示されました。

1. 核心となる法的リスクと課題
中国の労働法制には、定年退職時の契約終了に関して、以下の「2つの規定のズレ」が存在します。

  1. (1)『労働契約法』第44条
    労働者が「基本養老保険(年金)待遇の享受を開始した時」に労働契約は終了する。
    (2)『労働契約法実施条例』第21条
    労働者が「法定定年年齢に達した時」に労働契約は終了する。
    このズレにより、「年齢は定年に達したが、納付期間不足などで年金がまだもらえない従業員」を退職させる際、それが「自然終了(補償金不要)」なのか、「会社都合解除(補償金必要)」なのかでトラブルが多発していました。

2. 注目の最新判例(高裁による逆転判決)
直近で公開された事例(遼寧省高裁および中級人民法院再審)では、一度は会社側が敗訴したものの、再審で「補償金支払い不要」へと逆転しました。
【事件の概要】
・当事者 女性従業員(50歳到達)、会社側
・経緯 従業員が50歳(女性ワーカーの法定定年)になったため、会社は契約終了を通知。しかし、従業員は年金受給資格を満たしていなかった。
・一審・二審の判断(会社敗訴)
「年金をもらえていない以上、まだ労働者としての資格がある。定年を理由にした契約終了は違法」とし、会社に経済補償金の支払いを命令。
・高裁および再審の判断(会社勝訴(2021)遼07民再53号)
下級審の判決を破棄。「法定定年年齢への到達」自体が、法律が定める独立した契約終了事由であると認定。
年金の有無にかかわらず、定年年齢到達をもって契約を終了させることは適法であり、経済補償金は不要とした。

3. 日系企業の実務留意点
今回の判例は、定年退職管理において企業側の裁量を強く支持するものです。
以下のポイントに基づき、貴社の運用をご確認ください。

  1. ① 「定年=契約終了」の原則徹底
    法定定年年齢(男性60歳、女性幹部55歳、女性一般職50歳)に達した日をもって、労働契約は「終了(終止)」となります。この場合、原則として経済補償金(Nヶ月分の給与)を支払う法的義務はありません。
    ※就業規則等で独自の退職金制度を設けている場合はそれに従います。
    ② 年金未受給者への対応
    上記の判例に基づき、本人が年金を受給できるかどうかにかかわらず、年齢到達時点で契約を終了させることは法的に可能です。「年金が出るまで雇い続けてほしい」という要望に応じる義務はありません。
    ③ 再雇用する場合は「契約形態」を変える
    定年後もその従業員が必要な場合、定年到達日をもって一度「労働契約」を終了させ、翌日から「労務協議(再雇用契約)」を締結してください。

・労働契約 労働法の強い保護下にある(解雇規制あり、残業代規定あり、社保加入必須)。
・労務契約 民法上の業務委託に近い関係(解雇規制なし、合意による報酬、社保加入義務なし)。
※定年後の再雇用者を「労働契約」のままにしておくと、解雇の難易度やコストが高止まりするリスクがあります。