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5年ほど前に結構話題になったツールで、カルチャーマップというものがあります。エリン・メイヤーさんというアメリカ人の研究者兼コンサルタントが著した「異文化理解力」という書籍で紹介されました。
カルチャーマップというのは、
1. コミュニケーション(率直か婉曲か) |
5. 決断(合意指向かトップダウンか) |
2. 評価(ネガティブフィードバックの仕方) |
6. 信頼(タスクベースか関係ベースか) |
3. 説得(原理重視か応用重視か) |
7. 見解の相違(対立受容型か、対立回避型か) |
4. リード(平等主義か階層主義か) |
8. スケジューリング(直線的か柔軟か) |
という8つの指標で、各国が持つ文化的な特性をプロットしたものです。当然、一国の中でも地域や個人によるばらつきはありますので、その分布を元にした平均値で設定されています。
例えば上司部下の関係性を示す4.リードは日本も中国も階層主義で、その程度は日本の方がより階層主義が強いとされています。通底する文化的には恐らくその通りなのだと思いますが、ビジネス現場にいる我々の実感だとちょっと違いますね。より洗練された「良い組織であろう」としている日本企業は、中国企業と比べると、かなり平等主義に寄っているのではないかとも感じます。
しかし、刷り込まれた文化は階層主義なので、中国人社員による「日本的には無礼」に思われるような言動に反応してしまったりする場合は結構あるように思います。上司への報連相をやたらと要求する日本人に対し、報告なしで勝手にやってしまう中国人社員などという図式もこれに当たると思われます。
そして階層主義の国では、多くが5.決断はトップダウンになっており、中国はもちろんトップダウンです。中国に多数進出している韓国企業もトップダウンで、アメリカは平等主義ですがトップダウン。ところが日本は、中国や韓国以上の階層主義なのに、圧倒的に合意指向です。
どうでしょうか。日系企業で働く中国人が混乱してしまうのも無理はないなあと思われませんか?個人の経験値にもよりますから一概には言えないにせよ、中国人社員にはかなりなじみがある外国である日本とアメリカ。それぞれ上司との関係は階層主義(日本、中国)、平等主義(アメリカや一部の日本)であるのに、アメリカや中国は当たり前のように上司が意思決定します。なのに日本は上司が決めてくれず、「君はどう思う?どうしたい?」と聞いてくる。
「それ決めるのはアンタの仕事でしょ(無能なリーダーだなあ)」と思っているかもしれません。じゃあ部下の方で決めて動けば良いのかと言えば、いちいち承認が要る。意味が分からないでしょうね。
全然違う文化なら、お互いに宇宙人だと思えばいいのでしょうが、東アジア圏同士で、同じ顔でもあり、その他の部分では、かなり似通った特性も持っている日本と中国が、しかし細かなところで違うというのが、相互理解を難しくしている原因なのだろうと思います。解決策はお互いの違いをお互いがきちんと認識して、理解し合うしかないというメイヤーさんの指摘は身も蓋もありませんが、その通りですね。
御社で起こっている日本人と中国人の、何となくおかしいなあ、という各種の掛け違いも、こうした指標で解析してみると、すっきりするかもしれません。話し合う時には、感情的になってはいけないので、是非ファシリテーターとしてマイツにお声がけください。
今号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。