【2021年6月】成果主義とチーム評価

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日系企業が苦手としている人事ポリシーのひとつに「成果主義」があります。各社とも一度は導入を検討しつつ、諸般の事情によって断念されていたり、導入したけれどうまくいかずに困っておられたりするようです。成果主義には確かに、各種の負の側面があります。

?     社内がギスギスする

?     自分が成果を独占するために情報を隠す

?     個人成果の計測が難しい

…等々

前号でも書きましたが、現代の企業組織において、ほとんどの仕事はひとりで行っているのではなく、誰かと協力して進められます。その中で、個人の成果にフォーカスするとチームワークが悪くなり兼ねない、というのは至極もっともな心配でしょう。

そこで昨今、注目されているものが、「チーム評価」です。日本式人事の逆輸入バージョンのようなものですが、米国式に明確な成果計測と、処遇反映がなされるところが、過去に日本で行われていたものとは異なります。チームワークが苦手と言われる中国人にも適合するものになっています。この運用のポイントになるのが、

1.      誰と誰がチームなのかを明確にする

2.      チームの成果を明確にする

3.      処遇反映ルールを明確にする

ことです。1.はつい職制上の課とか、会社が指定したプロジェクトチームなどを対象に考えてしまいがちですが、実は社内には自発的にチーム活動を行っている社員が沢山います。こうした非公式なチームでの成果も掬い上げられる仕組みが作れるとなお、好ましいでしょう。

2.の成果の明確化は、特に間接業務系では難しいと言われます。それは「中期的に会社をどういう状態にしたいのか」という定性的な状態ゴールが明示されていないために起こっていることが多いようです。中期(3年程度)に目指す状態としての目標が明確で、そのためにこの1年、あるいは半年程度の一定期間に、やりきっておきたいことが、「会社経営の中で」明示されていれば、その目標に如何に貢献したか、という視点で容易に成果を測ることができます。

またここでは「成果」に焦点を当てていますので、成果が出なかった場合は評価が低くなる、ということも起こります。しかし、不確実性が高まっている事業環境下で、チームが協力して試行錯誤してくれているという状態になっている組織の場合、「仮に失敗しても、その失敗から学習した新たな知見」を「成果」と見なしてあげることも価値があります。

最後に3.処遇ですが、最初は少額の賞与設定などから導入されるケースが多いようです。昇格、昇給にリンクさせてしまえれば、会社としてもチーム活動が当社のベースである、という強いメッセージになるのでより好ましいのですが、チーム内でのメンバー貢献度に応じた評価格差をどう付けていくかや、一時的に特定のチームに所属して成果を出して昇給したが、翌年からさっぱり、という社員をどう扱うかなど、実際にはきめ細かな細則を必要とするために、全面移行には時間を掛けられた方がいいと思われます。

チーム評価制度を、御社でもまずは現在の評価制度の補完制度として、ご検討なさっては如何でしょうか?今号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。