【2019年12月】中国で新卒採用をするなら

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中国で新卒採用をするなら

 経営コンサルタントの谷です。中国で新卒採用を行っている日系企業はまだまだ少数派です。8090%近い企業では、一部新卒を採っていても、採用のほとんどが中途採用という状況のようです。

新卒を以前は採用していたけど今はしていない、とおっしゃる総経理にお聞きすると、「新卒を採って育てても、やっと基本的な仕事の仕方を覚えたところで転職されてしまうので、競合に人材を供給しているようなものだ」と言われます。確かに中国は人材の流動性が高いため、離職のリスクは十分に考慮して組織作りを行う必要がありますね。

しかし、新卒を採用して、数年で転職されているようなケースでは、実はもっと根本的な問題があることも多いようです。ひとつは日本から持ち込んだ「給与体系」。もうひとつは「若手育成プログラム」です。

まず給与については、職種によって異なりますが、例えば「営業職」を例に取れば、新卒者なら、上海の場合、5,000元ほどの手取りで採用が可能です。日本企業の多くが、年率67%程度の昇給率であるため、3年後の給与は、やっと6,000元。一方、中途人材市場で、26歳の経験者は、78,000元のオファーが普通に得られます。日系企業で3年間みっちり仕込まれ、日本語と英語を操れる、ということになれば、10,000元以上を提示する会社もいくらでもあります。

では、市場に合わせた昇給をしてあげればいいのでしょうか?そうはいっても10%20%も昇給できるほど、育ってもいないし、貢献もして貰ってないよ、という声が聞こえてきます。恐らくその通りなのでしょう。そこで問題になるのが「育成プログラム」ということになるのですが、皆様の会社では育成のスパンをどれくらいの区切りで設定されていますでしょうか。年に一度、自身の成長目標を作成させ、上司と合意させているだけ、ということはありませんか?

それで3年後に1万元(初任給の2倍)を払ってもいいレベルの人材に育つなら、その人材は御社でなくとも勝手に育ちます。そしてそういう優秀かつ自律的な人材は、より高いレベルの仕事を求めて飛び出していくでしょう。

人材育成、特に新卒や若手社員に対する育成では、その目的とプログラム構成が非常に重要です。一例ですが弊社でご支援して作成した新人育成プログラムのポリシーをご紹介します。

育成の目的

自社で510年勤務することの価値を理解して貰うこと

教育項目(構成)

マインド:スキル=82とし、ナレッジ系の研修は会社から提供しない

他部門との交流を、人事部主導で設定し、グループ全体の理解と社内人脈作りを促す

サイクル

四半期ごと(3年で12回のPDCAを回す)

目先の業務に集中させたいという上司の皆さんのお気持ちも分かるのですが、人材側から見れば「この会社に発展空間はあるのか」「互いに刺激し合い、高め合える仲間はいるのか」が、会社を辞めずに働き続ける理由になるからというのが、上記ポリシーの設定の背景になっています。もちろん、この前段階には、510年のキャリアパスの明示及び、給与を大きく上げられる制度があり、ひとりひとりが、自社の事業計画とリンクしたキャリアビジョンを描けるよう支援を行っています。

皆様の会社でも、中長期での組織作りを目指し、優秀な新卒を採用して育ててみては如何でしょうか?