中国の労働契約法は、2008年に制定され、すでに10年以上が経ちました。日系企業の多くは、同法が制定された直後に、会社の就業規則を制定・導入し、10年以上運用してきました。特に、2016年に中国一人子政策に関する法律が改定されたため、今までの就業規則の規定は法律に合致しなくなり、弊社にも就業規則のレビュー・改定業務が殺到しています。その中で多くの日系企業の就業規則の中の「労働契約の終了」に関する規定が運用しにくい傾向があり、皆さんに紹介させていただきたいと考えます。
中国の労働契約法及び労働契約法実施条例では、以下の状況に該当する場合、労働契約を終了することができると定めています。
1. 労働契約が期間満了したとき
2. 労働者が法律に従い、養老保険を享受し始めるとき
3. 労働者が死亡した、あるいは裁判所が死亡または行方不明を宣言したとき
4. 会社が法に基づいた破産宣告を受けたとき
5. 会社が営業許可書の取り上げ、閉鎖、撤銷を命じられた場合、定められた年限を前に自発的に解散を決定したとき
6. 労働者が勤務してから1か月以内に、会社の書面通知にも関わらず、書面の労働契約を締結しないとき
上記労働契約を終了する条件の中、特に1番の「期間満了による終了」は日常的によく使われ、問題も集中しています。主に以下の問題を指摘できます。
1.労働契約期間満了で終了する場合、1か月前に通知しなければならないか?
多くの日系企業の就業規則には、「労働契約期間満了日1か月前までに、会社から更新の可否を従業員に通知するものとする」、或いは「労働契約終了する場合、会社は終了日の1か月前に従業員に通知する」と定めています。会社側から労働契約を終了すると従業員に通知してしまうと、当該従業員のモチベーションが低くなり、担当業務を怠り、さらに周囲に悪影響を与えてしまうことも考えられます。このため、日常の管理実務では、労働契約の終了は、最終勤務日直前で通知する必要が出てきます。ただし、就業規則に上記規定を定めてしまうと、1か月前の通知義務が発生し、会社の労務管理の自由を制限されてしまいます。
実は、上海の法律では、労働契約が期間満了する場合、事前に従業員に通知しなくても、契約を終了することができると定めています。当日通知して、契約終了しても違法ではありません。しかし、従業員に準備させる時間を与えるため、実務では最終勤務日の1~2週間前に通知することが適切だと考えられます。
ただし、中国の一部地域では、労働契約期間満了で終了する場合、1か月前の通知義務が定められている地域もあります。今までの判例を見れば、北京市は1か月前に従業員に通知しなければ、その分の給与を支給すると判決しました。
2.労働契約期間満了で終了する場合、経済補償金を支給する必要があるか?
一部日系企業の就業規則では、「労働契約期間満了で終了する場合、会社は一切経済補償を与えないものとする」と定めています。これは2008年以前に就業規則を制定し、今まで見直しが実施されていなかった会社で散見されます。
2008年に制定された労働契約法では、会社側から労働契約の終了を提示する場合、法定の経済補償金の支払い義務が発生します。従業員から終了を提示する場合、或いは会社側から以前の契約と同じ内容で更新することを提示し、従業員が拒否した場合、経済補償金の支払い義務がなくなります。
3.固定期間のある労働契約であれば、何回目の契約かにかかわらず、終了できるか?
中国労働契約法では、連続で2回契約を締結した後、無固定期間の労働契約を締結する必要があると定めています。そこで、2回目の契約を期間満了で終了できるかと、労務管理担当者から質問をいただくことが多いです。
上海の判例を見れば、上海は契約の約定を優先する傾向があり、何回目の契約かにかかわらず、固定で期間のある契約であれば、終了することができます。
ただし、北京などの都市では、2回目の労働契約の場合、会社側から期間満了による終了ができないとの判例が主流となっています。
会社のコンプライアンスを保証するため、法律に合致する各種規程を制定し、正しく運用する必要があります。就業規則など最新の法規定に合致するか、弊社の無料簡易レビューサービスを検討されてみてはいかがでしょうか。