先日、以下のニュースが流れました。本号では今後問題になり得る違法派遣・違法請負について解説いたします。
米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を製造している中国内陸部の河南省鄭州市の生産拠点で、中国の労働法違反があったことが9日、明らかになった。
中国の労働実態を監視する米国の非営利組織「チャイナ・レーバー・ウオッチ(CLW)」の調査によると、鄭州にあるiPhoneの生産拠点で総従業員に占める派遣労働者の比率が8月に5割に達し、中国の労働法で定める1割を大幅に上回った。夏休みだった学生の派遣労働者も多かったようだ(日本経済新聞2019年9月9日)
1 実は多い違法派遣
実は上記のような状態にある工場は内資系、外資系を問わず無数にあります。
数年前に、以下の通り労務派遣について厳しい規制が導入されたためです。
2013年7月に「労働契約法」が改正され、労務派遣は「一時的、補助的または代替的」な職場でのみ実施されると規制されました。一時的な職場とは存続期間が6か月未満のものを指し、補助的な職場とは主な業務のためにサービスを提供する非専門業務のことです。代替的な職場とは、労働者が離職学習、休暇などの理由で仕事ができない一定期間内に他の労働者が代わりに働くことができる職場のことです。
かつ、2014年3月1日から施行された「労務派遣暫定規定」では、派遣された労働者の割合が全体の10%以内になることを求めております。10%を超過した場合は施行から2年以内に10%以下になることを求めております。
はっきり申し上げて、上記規制をクリアして派遣従業員を使用することは非常に難しいです。業務が非常に限定され、かつ10%以内に制限されているため、業務量の繁閑期に合わせて柔軟に派遣従業員を使用することができません。現在、派遣従業員を使用している多くの事業所は違法状態にあります。
2 多用される「外包」(違法であることがほとんど)
この規制を免れるために中国では現在「外包(ワイバオ)」が多用されています。日本で言えばアウトソーシングや請負と呼ばれます。この名称の契約であれば問題ないと説明を受けて、利用している場合も多いと思います。
しかし、「労務派遣暫定規定」第27条は「請負、アウトソーシングなどの名目で、派遣労働者として労働者を使用する場合は、本規定に従って処理する」と規定しています。
要するに実態として使用者が外包の従業員を直接、指揮命令して「使用」していれば、派遣労働者として規制の対象になるわけです。
実は、中国政府は、ここ数年この問題を見逃してきました。厳しく規制すると企業の生産活動を阻害し経済環境に悪影響が出るからです。しかし、思わぬ形で欧米メディアがこれを報道したため、中国政府が今後規制を強化する可能性があります(約10年前の日本の偽装請負問題も報道から問題になりました)。
仮に派遣、「外包」従業員の割合が多い場合は、対策(直接雇用、正規の請負化)を今から検討する必要があります。