先日、中国共産党中央委員会、国務院が「新時代における産業労働者チームの建設改革方案」を発表しました。共産党は産業労働者階級を基礎とする党派ですが、この十数年の中国の改革では労働者階級に十分な利益分配をせず、産業労働者の所得や業務能力は低い水準にとどまっています。社会の安定を図り、平等に社会資源を分配するために、当該方案が出されたと考えられます。新方案では、産業労働者に対し以下の6つの面を改革すると規定しました。
● 産業労働者を保護するための法制度の強化。産業労働者の教育と研修を受ける権利を保障し、企業における民主的管理、集団協議などに関する制度を構築し、企業が法律通り社会的責任を履行することを監督する。
● 補助金制度の改善。雇用に関する補助金制度を改善し、補助の対象と金額を合理化することで、産業労働者の教育研修を支援する。
● 企業に従業員教育補助金を導入し、企業の職業教育の参加及び開催を支援する。
● 産業労働者の労働経済権益保障体制を改善する。給与に関する平等な協議制度、昇給制度、支払保証制度などを強化し、社会的に産業労働者に偏る分配制度を構築し、産業労働者が分配決定に参画する権利を保障する。社会全体の保険制度を改善し、労働者が地域・業界・会社間で流動する際の社会保険関係の移転を円滑化する。安全な生産活動と職業選択を保障する。労務派遣を規制する。
● 産業労働者の理論政策研究の強化。
● 労働、技術を尊重する社会的風土の構築。
今回発表された方案は、まだ中央政府の指導的なもので、企業・労働者に直接的な影響を与えることはありませんが、各地方では、この指導に基づき、企業の管理監督を強化することが予想されます。主に以下の面で直接的な影響が発生すると考えられます。
1. 最低賃金の継続的な上昇
現在、産業労働者の多くは最低賃金レベルの給与が適用されている。給与上昇を保証するため、最低賃金が継続的に大幅に(8%超え)上昇する可能性が高い。
2. 社会保険金・住宅積立金納付監査の強化
一部製造系企業は、労働者の社会保険金・住宅積立金を満額納付していない。それに対する監査が強化され、過去にさかのぼり納付を要求される可能性が高い。
3. 給与不払いなど企業による労働者権益侵害行為の処罰強化
建設業などで給与不払いが多発し、社会的問題になっている。これらの労働者権益の侵害行為に対する処罰を厳重化し、政府部門による定期検査が厳しくなる可能性が高い。
4. 企業内で昇給決定に対する労働者の発言権の強化
集団協議制度を導入し、労働者に昇給決定の際に一定の発言権を与える。企業の昇給制度については、こういった民主的プロセスを経て、労働者の同意が必要になる可能性が高い。
以上のように、今回発表された方案は、労働者の権益を保障する内容になっています。会社がその都度、労働者の要求に対応することは多大な人的リソースや財力を浪費するため、事前に労働者と協議し、統一的な社内制度を構築することが有効だと考えられます。