【2016年7月】残業代の基数について

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 今回は、日系企業で起こりうる頭の痛い問題を取り上げたいと思います。
日本と異なり、中国での残業代の基数の計算については、法律上定めはあるものの分かりにくく、日系企業により計算方法がまちまちです。
たかが残業代の基数と言っても、多くの従業員に関係するものであり、中国では未払賃金の消滅時効が無いため、場合によっては深刻な労務トラブルに発展することがあります。


●残業代基数について(上海市)
例えば、ある日系企業において賃金項目を基本給、役割給、役職手当、通勤手当(実費支給)と定めていたとします。
法令(「労働者の年間、月間平均労働時間及び賃金の換算問題に関する通知」)は残業代の計算方法を時給(月給÷21.75÷8時間)×割増率と定めております。
問題は、この時給計算の分子である月給とは何を指すのかが明確になっていないことです。
そのため、多くの日系企業は、基数の定義について何ら就業規則や賃金規則に定めず独自に運用するか、又は就業規則や賃金規則で残業代の基数となる賃金について、「残業代の計算基数は基本給とする」等の条項を定め運用しています。
しかし、「上海市高級人民院関与労働争議若干問題的解答上海市高?人民法院?于??争?若干??的解答(上海高級人民法院民―庭調研指導  上海高?人民法院民一庭?研指?【2010】34号)」は、原則として、残業代基数は正常勤務時間の月給とするべきであり、正常勤務時間の給与金額を確定出来ない場合、毎月の給料の内、変動性の賞与、福利厚生やリスクに関する賃金を除いた全ての賃金項目を残業代の基数にしなければならないと通知しています。
労働者保護の為に、紛争が起こりやすい残業代の基数となる月給について会社が自由に決めることを認めず一定の規制を定めたわけです。そうなると、上記事例では、基本給のみならず役割給や役職手当を残業代の基数に算入しないといけなくなり、算入していなかった本件事例では未払い残業代が発生していたことになります(通勤手当は実費支給であり福利厚生に関する費用ですので残業代の基数には算入する必要はありません。が例えば300元などと決めて固定的に通勤手当を支払っている場合は残業代の基数に入れなければなりません)。
また、「上海市企業賃金支払規則(上海市企?工?支付?法)」にもとづいて賃金の70%を残業代の基数として計算している事例もありますが、これは上記裁判所の通達の趣旨から現在は多くの事例で違法な取り扱いであると解釈されております(変動性の賞与や福利厚生やリスクに関する賃金が多額に上る場合は賃金の70%を残業代の基数として計算してもよいとされています)。


今一度残業代の基数についてご確認することをお勧め致します。