2016.02.01
営業企画部 片瀬陽平
今回は海外赴任者の赴任時の確定申告についてお話ししようと思っています。現在多くの日系企業はその活躍の場所を海外に求め、それに伴い多くの日本人が海外に赴任しています。その中には給与所得以外の所得を得ている者や住宅ロー
ン控除の適用を受けている者など個人の所得税関連にて注意しなければならない者が少なからずいます。個人所得税の論点は細かく枝葉に分かれてしまいますので全てをお話しすることは難しいですが、まずは給与所得以外の所得を得ている
者と赴任時の確定申告について確認してもらえればと思います。
【納税管理人の選人】
海外に赴任する駐在員に関して給与所得以外の所得(基礎控除38万円を超える所得)が発生する場合には、納税管理人の選任が必要となります。
納税管理人とは、個人である納税者の代理人として、日本の税務申告書の提出や国税に関する諸々の事項を処理する必要がある場合など、それらの行為を納税義務者に代わって行う者(個人・法人・資格の有無など問わず)をいいます。
納税管理人を選任する場合には、出国日までに赴任者の納税地(基本的には赴任直前の住所地)の所轄税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出しなければなりません。
なお、納税管理人を解任した際にも、納税地の所轄税務署長に対し、その旨を届け出る必要があります。
納税管理人を選任している場合としていない場合では、赴任時の確定申告及び年末調整の取扱が違います。また、次年度以降に給与所得以外の所得が発生する者に関しては、今後も引き続き確定申告を行わなくてはなりませんので納税管理人を必ず選任します。
それでは確定申告及び年末調整について納税管理人の選任をしている場合としていない場合に分けて確認してみたいと思います。
【確定申告及び年末調整について】
①確定申告書の提出
ⅰ)納税管理人を選任している場合
その年の1月1日から海外勤務者として赴任する日までの居住者であった期間に生じた給与所得及びその他一定の国内源泉所得と、海外勤務者として赴任した日からその年の12月31日までに生じた一定の国内源泉所得について、納税管理人
を選任している場合には、海外勤務者として赴任した年の翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。
ⅱ)納税管理人を選任していない場合
その年の1月1日から海外勤務者として赴任するまでの居住者であった期間に生じた給与所得以外の所得の金額があり、納税管理人の選任をしていない場合には、その出国の時までに確定申告を行います。
注1)その居住者であった期間に給与所得以外の所得が生じていない場合には、出国時に年末調整が行われるだけであり、確定申告の必要はありませんが、赴任時までの給与所得の総額が2千万円を超える場合には、確定申告が必要となります。
次に諸控除の判定時期や諸控除の計算について簡単に記載します。
①諸控除の判定時期
ⅰ)納税管理人を選任している場合・・・・・・12月31日
ⅱ)納税管理人を選任していない場合・・・・・出国日
②諸控除の計算
ⅰ)医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料、小規模企業共済等掛金控除
の計算・・・居住期間内に支払った金額を基に計算
ⅱ)扶養、配偶者、障害者、寡婦(夫)、勤労学生控除の計算
(納税管理人あり)・・・12月31日の現況により計算
(納税管理人なし)・・・出国日の現況により計算
ⅲ)雑損控除の計算
・・・居住者及び非居住者期間に生じた所得金額・損失額を通算し計算
日本人従業員に関しては、給与所得以外の所得があることを会社にできることなら隠そうとすることが多く、会社を納税管理人とすることに少なからず後ろ向きな思いもあるようです。そのために日系企業では、不動産所得などの他の所得があれば納税管理人の選定が必要になる旨のアナウンスを事前に赴任者に行い、必要であれば会社が納税管理人となることともできる旨の提案をすることが必要です。
納税管理人については最終的に個人所得税の問題となりますので、会社としてできる限りのことを行い、最終的な判断については個人にゆだねることが良いかと思います。