大家好!執筆時は11月初旬ですが、一旦寒くなったと思ったらまた暖かくなり、本日の蘇州は27度と汗ばむ陽気となっています。皆様に配信される時点ではきっと本格的に寒くなっていることと思います。くれぐれも健康にはご留意くださいますようお願い申し上げます。
ちょうど1年前の上海通信2014年12月号で「固定資産の加速減価償却に係る企業所得税の通知」(財税【2014】75号)を紹介させて頂きましたが、2015年9月17日公布の「固定資産の加速償却の拡大に係る企業所得税の取扱いに関する通知」(財税【2015】106号)にて更に範囲が拡大されました。具体的には2014年通知では「生物医薬品製造業、専用設備製造業、鉄道・船舶・航空宇宙とその他の運輸設備製造業、コンピュータ・通信とその他の電子設備製造業、計測機器製造業、情報コミュニケーション・ソフトウェアと情報テクノロジーサービス業等の6業種企業」であったものが、2015年通知では「軽工業、紡績、機械、自動車の4重点業種」にまで拡大されました。主要内容は次の通りです。
・ 上記4重点業種の企業が2015年1月1日以後新規購入した固定資産は耐用年数の短縮または加速減価償却の採用が認められます。
・ 上記4重点業種の小型微利企業が2015年1月1日以後新規購入した研究開発及び生産経営に用いる機器、設備について、単価が100万元以下のものは当期原価費用一括計上及び税前控除(損金算入)が認められます。単価が100万元を超えるものは耐用年数の短縮または加速減価償却の採用が認められます。
・ 耐用年数を短縮する場合、最短年数は耐用年数の60%になります。加速減価償却を採用する場合、200%定率法又は級数法を選択できます。
4重点業種については、財税【2014】75号の付属文書に詳細リストがあります。また9月25日に国家税務総局公告2015年第68号が発行されており、本通知を補完、解説しています。
昨年とあまり変わりませんが、私見としてポイントは次の通りです。
・ 今回の範囲拡大により、多くの日系企業が本政策を享受できると思われます。
昨年度は5,000元以下の固定資産の一括償却は散見されましたが、6業種の範囲が狭く、日系企業では加速償却を採用した事例は多くありませんでした。安定して利益を計上しており実際に納税しているが、今年度に比較的設備投資が多く、資金繰りがやや緊張しているような場合は、非常に有用な政策となります。
・ 国家税務総局公告2015年第68号でも言及されていますが、本通知は企業所得税に係る取扱いであり、原則として会計方針は従来通り変更ありません。よって、納税調整(先に減算、後に加算)が発生します。税務上の簿価と会計上の簿価が相違しますので、台帳で正確に計算管理する必要があります。また、税効果会計を適用している場合は将来加算一時差異となり、繰延税金負債が発生します。
・ 本通知は全て「マスト」ではなく「出来る」規定です。正確には減税ではなく課税の繰り延べです。期限切れの繰越欠損金が発生する場合は、適用しない方が税務上有利になります。タックスプランニングにより本通知の適用の是非を検討されることを提案します。