[2012年8月号] 労働契約法の修正草案

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 2008年1月から施行されている労働契約法に対し、6月に「修正案」の草案が全国人民代表大会常務委員会に提出されました。まだ草案段階であり、各所からの意見等を踏まえ今後変更が加えられるかと思われます。今回は注目されているこの草案に関してお伝え致します。

<草案の主な内容>
● 労務派遣が使用できる職位を厳しく制限
  労務派遣が行えるのは「臨時性、補助性、代替性」のある職位のみに限る。
   【臨時性】継続期間は6ヶ月を超えないこと。
   【補助性】業務の性質が判断基準。会社の主要業務にサービスを提供すること。
   【代替性】代替条件を限定。例えば従業員が学習や休暇等の原因により、一定期間
         仕事ができない場合。

● 労務派遣会社の設立には行政部門の許可必要、最低資本金は増額
  労務派遣業務を経営するためには、法に基づき労働行政部門に行政許可を得なければならない。また登 

  録最低資本額を50万元から100万元に引き上げ、労務派遣会社が法律規定に一致する労務派遣管理制

  度を確立しなければならない等の内容を追加した。
 

● 違法行為に対する罰則を強化
  労務派遣会社や派遣先が、労働契約法

  の規定に違反し状況が深刻な場合は、罰金を課す。罰金の金額

  は、現行の労働契約法に定められた一人につき1,000~5,000元から、一人につき5,000~10,000元へと

  増額。そして労務派遣会社の行政許可を取り上げることができる。また許可を得ずに労務派遣業務を行っ

  た場合、労働行政部門が法律に従い取り締まり違法所得を取り上げ、違法所得の1倍以上5倍以下の罰金

  を課するとの内容を追加した。
 

● 「同一労働同一賃金」の強化
  以前から労働契約法にも定められている重要な原則の1つ。この原則を適切に守るために、草案では労務

  派遣会社が「派遣従業員と締結した労働契約」及び「会社と締結した労務派遣協議」に明記あるいは約定し

  た派遣従業員に支払う労働報酬が、同一労働同一賃金の規定と一致しなければならないと定めた。

 

 この草案が出た背景の1つには、派遣従業員の権益侵害や派遣従業員の乱用があげられます。
人民網のニュースに『全国総労働工会の統計によると、「労働契約法」実施前には派遣従業員数が全国で約1,600万人余りだったのが、2011年末には6,000万にまで爆発的に増加した』とありました。この統計は完全に正確なものであるとは言い難いようですが、『どんなに控えめに見ても、少なくとも4,000万人には達していると考えられる』とのこと。想定以上の派遣企業と派遣従業員の増加があり、それに伴い弊害も散見されるようになりました。例えば派遣従業員が直接雇用者より劣る待遇を受ける、派遣本来の使用意図とは異なる乱用がされる等。
 

 上記内容はあくまで草案であり、今後内容の変更が加えられる可能性は高いです。しかし直接雇用を推奨する流れは変わりません。派遣会社の在り方も、派遣手数料収入から「人事代行(アウトソース)」や「人材紹介」のサービス等、変化が求められ淘汰が進む時期に入りそうです。派遣従業員を使用している場合は今後の動きにご注目下さい。