10月15日に「中国国内で就業する外国人の社会保険参加暫定弁法」(中国人力資源社会保障部第16号令)が施行されて1ヶ月以上が経過していますが、ほとんどの地域で「細則」が発布されていない状況が続いています。10月末に北京労働部の幹部による「各地方政府に対して、年末までに細則を発布するよう指示した」という報道もありましたが、上海市においても11月24日現在でまだ細則発布の動きはありません。
こうした状況に対して、JETROが11月1日、在広州日本総領事館、広州日本商工会と共催で広州市社会保障局と地方税務局の担当者を招いての「説明・意見交換会」を開催しました。広州市においての話ではありますが、対策案を検討するには参考になる有力情報が盛り込まれていますので、この「意見交換会」の内容についてお知らせします。
(以下、『通商弘報』記事より引用。JETROホームページにて全文が公開されています。)
http://www.jetro.go.jp/biznews/4ec1fd4ac8ed8
ポイントは3つあります。以下、当局者のコメントからの抜粋です。
① 『a.現地法人との間で雇用契約関係にある日本人と、
b.日本本社と雇用契約関係にある日本人、に分けて考えることが必要だ。』
② 『広州市では細則制定の予定はない』
③ 『60歳以上の外国人は、加入しなくて良いだろう』
まず①について、広州市当局者は『中国人と結婚し中国で社会生活を送る外国人や、本国からの出向ではない現地採用外国人など、社会保険に加入したいが加入できなかった人たちのために道を開いた制度』と強調しています。この点から、当初の予想通り「現地採用・日本人」については強制加入となることは間違いなさそうです。問題はbの「出向」という「日本側制度」に基づいて勤務している駐在員です。「対象とならない者」の定義についても興味深い発言があります。
『b.は日本を含む海外の法人から[給与を全額支給されている日本人]を指す』
この発言は「中国側制度」から見れば至極当然の内容と思われます。昨年も税務上の問題から「日本人駐在員の所属はどちらなのか?」について議論があったことを覚えておられる方もいらっしゃるかと思います。日本では労働者が複数の法人と雇用契約を締結する「二重雇用」が法律的にも認められているため「出向」という概念が成立すると言えます。しかし、中国では「二重雇用が発覚し会社からの是正命令にも従わない場合解雇可能(労働契約法 第39条)」と定められていることなどから、「二重雇用」を前提とした「出向」という概念は存在していないとも考えられます。
つまり、本社と現地法人との間で「負担割合」が定められた駐在員給与は、中国側から見れば「存在し得ない」ということになるのかもしれません。
日系企業の大きな懸念材料の1つに、社会保険[納付基数]の根拠となる「給与はどこまでを含むのか?」というものがあります。しかし、②で『広州市では細則制定の予定はない』と明言されていますし、仮に発布されたとしても公式文書で「給与の定義」について「規定されない」ことも想定されます。
③の『60歳以上の加入はない』ことは安心材料ですが、60歳以上への「就労ビザ」の発行は年々許可されにくくなっている状況も無視できません。
このように、外国人の社会保険加入問題では「明確な基準」が示されないまま、自社で判断して行動することが求められるようになることも想定しておいた方が良いかもしれません。