中国の「工会」は、「労働組合」と「翻訳」されてしまっています。
実は、この「翻訳」が「工会」が大きく「誤解」されている原因になっているのではないかと感じています。他にも「経済補償金」が「退職金」と翻訳されていること、また日本と中国で同じ用語を用いている概念(「戸籍」や「派遣」)でも同様に「誤解」が蔓延してしまっているのではないか、、、と日々感じています。
日本の「労働組合」と中国の「工会」の[概念]を図にしたものが左図です。
このように、中国の「工会」の位置づけは日本と異なり、「敵対」ではなく、会社・労働者双方に法律を守らせること(時に国:共産党方針を徹底させること)を目的とした「共存(中立)」が前提となっています。
「労働者(弱者団体)の代表」としては、むしろ「従業員代表大会」が該当する組織と言えます。
日本人からすると、「労働組合」という言葉のイメージから、=「共産党」=「中国が本場」=「過激そう」=「恐怖」という連想になってしまうのかもしれません。しかし、現実の運用実態からすれば「主席の人選」さえ間違えなければ、会社に敵対するよりもむしろ、積極的に味方してくれることも少なくありません。
特に日系企業様の多くは、会社の基本方針として「コンプライアンス=法律遵守」を掲げておられるかと思います。「会社が法律を守る」立場であれば、「工会」が会社に対して「反体制側の総元締め」となるようなことは、まずありません。
また、日本の「労働組合」と異なり、「団体交渉権」「ストライキ」の権限も認められていません。現在、「工会主席」が董事会に参加することが規定された試行法が施行されていますが、これも「経営側」に「意見」できる権利のみ認めたものであり、会社の意志決定に関与できることを認めた規定ではありません。
ただ、2001年以降は徐々に日本の「労働組合」的な役割を「工会」に担わせる方向にあることは確かです。しかし、単に「翻訳された日本語の概念・イメージ」で決め付けてしまうのは早計です。外国においては、「客観的で正確な情報」を収集した上で「冷静に判断する」ことが適切な外国法人運営には特に重要になると考えています。