労働契約法における争点の一つが、社内規定の「承認」についてです。そのプロセスにおいて「工会」の存在がクローズアップされ、多くの日系企業さまにおける「不安要素」として指摘されています。
しかし、弊社では工会を「敵対する相手」ではなく、コンプライアンスを重視するご本社にとって、現地法人の法の番人として、「共存していく仲間」と考えられないか?とご提案しています。
今回は、この点について解説してみます。
多くの方々のイメージでは、中国現地法人に「工会」ができる事による不安点として、
『 労使交渉で不当に会社側に不当に不利な条件を要求されるのではないか? 』
という点に集約されるのではないでしょうか。
この発想の根源は、「労働組合」と日本語訳された言葉のイメージが、中国のイメージと直結して想起されたものではないでしょうか。
ここに盲点があります。「日本の労働組合」とは、日本は資本主義国家である事を前提とし、強者である資本家を前に弱者である労働者の利益を代表する労使間対立を想定した組織と言えます。
しかし、中国は社会主義国家であるため、労働者を搾取する資本家の存在も労使間対立も想定されていません。法律に明記された役割としては、「従業員の適法権益の代表者、維持・保護する者」とされています。
確かに、昨今の「工会法」の改正方針を見ていると今後は日本に近い役割も持つようになってくる事が想定されています。しかし、根本的な発想の根源が異なる事にご注意下さい。
実際に、現状の「工会法」では「工会」のストライキ権などは認められていません。また、会社の意思決定には一切関与できない事になっています。
ただ、経営者側に「意見する権利」が認められているだけ、とも言えます。
つまり、『 法を前提とした、労使間の利益調整役 』が現在の主な役割とされているとご理解頂いて間違いないかと思います。
確かに、「工会」は中国共産党の直轄組織としての政治的・公的な役割や、労働者の利益代表としての地位を強めている点は否めません。しかし、「現地化」という進出企業の大命題を前に考えれば、「法律を守る」事とともに、「工会といかにうまく付き合うか」という前提での発想・対策を考えなければならないのではないでしょうか。
このような、「概念の違い」を原因とする「誤解」は枚挙に暇がありません。日本人管理者、日本のご本社が意思決定をする際には、ぜひ、こういった背景情報を収集した上でご一考下さい。
以上、ご参考までに。