【2021年8月】過去の社会保険未加入で、経済補償金は支払われるか?!!

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中国労働契約法第三十八条では、会社が「法律規定通りに社会保険費を納付しなかった場合」、従業員側から労働契約を解除することができると、定めています。従業員が上記理由で労働契約を解除する場合、会社が経済補償金を納付する義務があります。

 ただし、中国は社会保険金制度が導入されて以来、何度も制度調整が実施され、従業員の認識も変化し続けてきました。特に、製造現場の従業員は出稼ぎ労働者が多いため、社会保険が不要との認識が強く残っています。日系企業はコンプライアンスを重視するため、社会保険に加入しないことはほとんどありませんが、法律が明確に定められていない段階で、社会保険が未加入となる会社はあります。では、従業員が過去に社会保険に加入していなかったことを理由として、会社に労働契約の解除と経済補償金を要求することができるでしょうか。最近、重慶高等裁判所は以下の判例を発表しました。

 ある従業員が20112月に入社しましたが、会社が20134月まで、当該従業員を社会保険に加入させず、20135月から加入手続きを実施しました。201912月に、従業員は「20112月から20134月の期間、会社が社会保険に加入しなかった」ことを理由として、労働契約法第三十八条に基づき、労働契約の解除と経済補償金31907.97元を求めました。

従業員の訴求に対し、一審と二審裁判所は「労働契約の解除権は、一定の期間制限を受けるものである。従業員は社会保険に加入していない事実を明確に知りながら、会社に異議を言わなかった。かつ20135月からの6年間も、会社がすでに法律要求通りに従業員の社会保険を納付してきた。要するに、違法事実はすでに終了した状態である。従業員はこの6年間の間に労働契約を解除する権利を行使しなかったため、権利はすでに消滅した」と、従業員の要求を却下しました。

裁判所の判断に対し、従業員は「中国労働契約法では、従業員が保有する権利について、時効を定めていない」として、高等裁判所に上告しました。高等裁判所は「従業員が6年間の在職期間中に、会社の社会保険未納付について、意義を申し立てていない」との理由で、一審と二審の判決を支持しました。

上記判例は重慶地域のもので、会社が当該地域においてかなりの有力企業で、判決は会社に傾斜しているとの見方もあり、法曹界からも反論の声が上がりました。ただし、本判決から、裁判所は従業員が現時点に受ける不利益を重視するが、過去に発生し、かつ会社がすでに法律の要求通りに改善した事項について、ある程度容認する態度が見えます。

中国は法体制を整備する段階で、各種法律要求が変化し続けています。過去、完全に法律の要求通りに実施しなかったこともあると考えられます。その場合は早めに法律通りに改善することが望ましいと考えられます。