【2021年4月】同僚の給与明細を盗み見ることを理由に解雇できるか

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1 賃金情報はプライバシーか

中国ではよく従業員同士が互いの賃金を教え合います。そうすると一部の従業員は同僚と比較して自分の賃金が低いと感じ、上司に抗議や苦情を言います。

一方で、公にしていない賃金情報がなぜか多くの従業員が知るところになっている場合もあります。関係者の誰かが漏らしているのです。

中国在住も長くなり、このような日常に慣れてしまうと、「中国では仕方が無い」と諦めてしまうのですが、賃金情報を盗み見た行為を理由にした解雇を有効と判断した裁判例がありましたので、ご紹介致します。

2 事例

王は2018516日に寧蘇ホテルに入社しました。労働契約の契約期間は2018516日から2021630日までで、そのうち試用期間は6ヶ月でした。

20187218時頃、王はフロントで同僚の周の(密封された)給与明細を勝手に開けて盗み見ました。周は給与明細が勝手に開けられたことを発見し、保安部は監視カメラを用いて状況を把握しました。

会社の就業規則第18条は、「客や従業員に迷惑をかけ、他人のプライバシーを覗くなどの行為」について深刻な違反行為であると規定していました。同時に就業規則には、深刻な違反行為があれば解雇を行うことを規定していました。

201878日、会社は即日労働契約を解除することを決定し、事前に労働組合に通知しました。

労働仲裁も一審で解雇は有効と判断しました。

王はこれを不服とし、二審に上訴しました。

3 裁判所の判断

2審判決も解雇は有効と判断しました。

理由は以下の通りです。

・密封された同僚の給与明細を勝手に開けて見るのは、プライバシーを覗く行為と本質的な差はない。

・王は、就業規則は賃金
情報が従業員のプライバシーであることを明確にしておらず、就業規則に違反していないと主張しているが、密封された給与明細は、外見的には手紙類に属し、内容的には個人賃金収入が記載され、個人財産状況に関連している。だから王が、密封された同僚の給与明細を勝手に開けて見た行為はプライバシーを覗く行為と本質的な違いはない。

・以上から王は規則制度に深刻に違反しており、解雇は有効である。

4 実務上の留意点

中国の労働裁判例も少しずつ変わっておりプライバシー侵害などを理由にした解雇を有効と判断するようになってきております。

当然賃金もプライバシー情報であり、(就業規則と証拠があれば)これを侵害する行為は厳罰に処することが可能です。