1 どのくらいの遅刻の頻度で解雇できるのか
頻繁に遅刻をする従業員が時折います。真面目に出勤している他の従業員に悪影響を与えますし、遅刻常習の従業員はその他の勤務態度にも問題があることが多いです。
本稿は、1ヶ月8回の遅刻で解雇された事案についての裁判例をご紹介致します。
2 事案
王は、2013年2月18日、深センのあるスーパーに入社し、販売員を務めました。スーパーは、2015年5月6日、王が2015年4月に8回遅刻したことを理由に労働契約解除通知書を出しました。王は上記の遅刻の事実には異論は無いが、会社の組合に事前に通知をしていないと主張し、解雇の違法性を主張しました。
3 労働仲裁・裁判所の判断
2015年6月8日、王が労働仲裁を申請し、違法な労働契約解除による経済補償金12210元を会社に支払うよう求めましたが、労働仲裁はこれを支持しませんでした。
一審裁判所は、会社が提出した就業規則によると、「正当な理由なく遅刻、早退が月に6回に達する」ことは重大な違法行為に当たると定めており、会社が提出した勤務表は、王小毛が2015年4月に8回遅刻したことを証明できるため、会社の解雇は適法であると判断しました。
王は二審や再審にも不服申立てをし、「遅刻しても仕事に大した影響はなく、借金の取り立て(!)のためにやむを得ず遅刻をしていた」と弁解を追加しましたが、同じ様に会社の解雇は適法であると判断しました(広東高院(2016年)粤民申7649号)。
4 実務上の留意点
この事件は事案が単純であり、唯一の争点は1ヶ月当たり8回の遅刻が重大な規則違反に該当して解雇できるかどうかにあります。
労働契約法は何度遅刻すれば解雇できるかについて定めておりませんので、事件の勝敗の鍵は会社の就業規則にあります。
最高人民法院が公布した「労働争議事件における法律適用に関する若干の問題の解釈」第十九条の規定によれば、裁判所が事件を処理する上で、就業規則が根拠となるかどうかは以下の3つの要素で決まることになります。
1、規則の制定過程において民主的な手続きを履行したかどうか
2、規制の内容は、国の法律、行政法規及び政策規定に違反しないか
3、規制を労働者に告知または公示したかどうか
月に8回遅刻するのが深刻な規則違反であるかどうかは、人によって解釈が分かれますが、常識的に分析すると、月の正常な労働日は22日前後であり、そのうち8回遅刻するということは3分の1以上を遅刻していることになり、明らかに合理的な限度を超えており、裁判官は重大な規則違反であると判断したと思われます。
この事案は、就業規則に明確にルールを定めることが如何に重要であるかが分かる事例であり、ご紹介致しました。