【2019年6月】人的生産性とRPA

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経営コンサルタントの谷です。中国では、まだ人件費の上昇が続いていますね。業界や地域による差はあるものの、今年も平均で6%程度の昇給がなされたようです。減速しているとはいえ、中国は市場自体も拡大していますので、一人あたりの付加価値が6%以上伸びてくれるなら、昇給原資も確保できることになります。そうでないなら、当たり前ですが、会社の利益はどんどん減っていきます。

会社が持続的に発展するためには、利益の伸び以上に給料を増やすことはできません。去年と同じ仕事をし、去年と同じ付加価値を生み出した社員の給料は、去年と同じでなければなりません。

経営としては当然のことなのですが、多くの企業において、「誰がいくらの付加価値を生み出したか」を計測できていません。よって、付加価値に対応せず、勤続年数や主観的な上司の評価に頼り、周辺相場で昇給をし、結果、「公正に評価されていない」と従業員のモティベーションを落とす、という状態になっていたりします。

ではなぜ「誰がいくらの付加価値を生み出したか」が計測できないのでしょうか。計測の理屈は簡単です。会社が組織として生み出した付加価値(≒粗利)を、その業務に関係した社員の貢献度合いに合わせて配分し、全業務分を集計すれば、個々人がいくらの付加価値を生み出したかが計算できます。ただ、この計算は多くの場合、一つ一つの取引や製品製造に対応した個別計算と集計が必要になり、そのような作業には膨大な工数が必要なうえ、その集計作業自体では1元の付加価値も生まないため、現実的ではありませんでした。

これが、RPAというシステムによって容易に行えるようになりました。

付加価値を生まない間接業務や、業務実施と生み出す付加価値に時間のズレが発生する開発業務などには、一定の経営判断が必要になりますが、「外販価格」などに置き換えをすることで計算可能になります。

RPAは、コンピュータ上でできるほぼ全ての作業を自動化するシステムで、例えば業務日報に記載された項目を元に、当該業務の粗利をDB上で参照し、決められた規則通りに個別業務の付加価値額を計算して、個人別に集計するというような作業を自動で行ってくれます。

目標管理制度などを導入されている企業であれば、ひとりひとりの目標の達成度評価などでも、今までは手間が掛かりすぎて数字で集計させられず、主観で判断せざるを得なかったようなケースをなくせることになります。これまで日本企業は、「正確かつ詳細な職務記述書の作成と更新」が苦手で、「職務価値評価」を人事評価に反映させることができませんでしたが、これも容易に集計できるようになります。

もちろん、ある社員が生み出した付加価値が多いから、少ないからといって、それをそのまま給料とリンクさせると、既得権のある部門と、戦略的赤字部門との不公平感が募って組織がおかしくなります。従って、給与制度の設計では、もう一工夫二工夫が必要になりますが、中国人の好む、「明解な指標による査定」がやりやすくなるという意味では、是非導入を検討されることをお勧めしたいと思っています。