企業が会計上損失処理した資産損失(注)を、企業所得税の計算上も損金算入するためには、国家税務総局公告2011年第25号「企業資産損失企業所得税税前控除管理弁法」(以下、2011年第25号公告)の規定により、定められた手順及び要求に従い、所轄税務機関に資産損失の控除申告を行う必要があります。
2011年第25号公告によると、企業の資産損失は、実際に損失が発生しかつ会計上損失処理が行われた年度の企業所得税年度確定申告を行う際に、所轄税務機関に資産損失の控除申告を行う必要があります。そして、この控除申告を行う際には、資産損失の内容に応じて、資産損失に関する証拠資料及び会計処理資料、納税資料などの関連資料を保管、或いは要求に応じて所轄税務機関に提出する必要がありました。定められた手順及び要求に従って資産損失を所轄税務機関に申告しない場合は、その資産損失について、課税所得からの控除(損金算入)が認められません。
(注) 資産損失とは、企業の生産経営活動において実際に発生した課税所得と関連する資産損失で、現金損失・預金損失・貸倒損失・貸付金損失・持分投資損失・固定資産及び棚卸資産の棚卸差損・破損・廃棄損・盗難損失・自然災害等の不可抗力による損失及びその他損失を含みます。
企業所得税の資産損失資料の調査に備えた保管に関する公告
2018年4月10日に、国家税務総局公告2018年第15号「企業所得税の資産損失資料の調査に備えた保管に関する公告(関于企業所得税資産損失資料留存備査有関事項的公告)」が公布され、上記の資産損失の控除申告手続(損金算入に関する申告手続)に関する規定が一部変わりました。本公告の概要は下記の通りです。
1. 企業が税務機関に対して資産損失の控除申告を行う場合、企業所得税年度納税申告表の「資産損失税前控除及納税調整明細表」を作成して報告するだけでよく、資産損失の関連資料の提出は不要である。関連資料は企業自身で調査に備えて保管する。
2. 企業は関連資料を完全に保管し、その資料の真実性、合法性を保証しなければならない。
3. 本公告の規定は、2017年以降の年度企業所得税確定申告から適用する。2011年第25号公告のうち、関連資料の提出に関する規定は廃止する。
本公告のポイント
Ø 整備・保管
本公告により申告手続自体は簡素化されたものの、今後も、資産損失を損金算入する際には、2011年第25号公告の規定に基づいて、会社自身で関連資料を整備・保管しなければなりません。
仮に税務調査等があった場合には、当該損失の実態を税務機関に説明できるように準備しておく必要があります。万が一税務調査等で税務機関が納得できる資料を提出できない場合等には、事後であっても資産損失の損金算入が否認されるリスクがあります。
Ø 適 用
さっそく2017年の年度企業所得税確定申告から本公告の規定が適用されます。本マイツ通信が発行される頃には、すでに大半の会社は2017年度の確定申告を終了されていると思われますが、関連資料の整備なしに資産損失を損金算入されていないか今一度確認されることをお勧めします。