【2017年6月】評価制度は公平でなければならないか?

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 経営コンサルタントの谷です。人事評価はなにより「公平」でなければならないとよく言われます。本当でしょうか?

 例えば、「上司に取り入って、覚えのめでたい奴が出世する」という会社があったとします。評価の低い人材からは、不平不満が噴出するかもしれません。「不公平な人事だ」と主張するかもしれません。何故でしょう?

 この会社の経営者は自分の考えたビジネスモデルを完成させるために、自分の分身ともいうべき人材を求めています。必ずしも十分に自分の考えを理解していなくても、「Yes Sir!」と元気に走ってくれる人材はそのような経営者にとっては非常に貴重です。しかし、その会社に「自ら考え、提案してくる」という評価項目があり、いちいち「Yes.But…」と言ってくる社員がいると、それは現場では「面倒くさい奴」扱いされてしまいます。

 上記は少し極端な例ですが、経営者の考える望ましい人材像が、「世間一般に言われる好ましい人材像」とズレているとこういうことが起こりがちになります。

 では、会社は「世間一般に言われる好ましい人材」で、経営をすればいいのでしょうか?私はそうは思いません。会社にはそれぞれの理念があり(反社会的な理念は困りますが)、固有の風土があり、置かれた環境も、経営手法もそれぞれ違っています。

 どのような会社にも、達成したいと思う目標があり、その目標に対して大きく貢献してくれる従業員を高く評価したいと考えます。短期的に貢献するか、中長期的に貢献するかの違いや、経営者に直言する(逆らってくる)者を評価するか、上司に付き従う(従順な)者を評価するかなど、会社によって評価の考え方は少しずつ異なります。しかし会社が獲得したいと思っている果実に向かって、何らかのロジックに基づき、正しい行動をし、正しい成果を出していると思われる人材が高評価されるべきであるという点には、誰もが同意してくださると思います。

 問題は、そのロジックがきちんと説明されておらず、一方で体裁のよい評価項目が別に用意されているのに、その評価項目に当てはまらない人材が厚遇されることがある、ということです。つまり、人材の評価は「公平」であるかないかがポイントなのではなく、「評価の理由が明確である」ことが大切であり、制度に示されていないロジックで評価がなされることがいけないことなのです。

 その意味で、評価制度は「経営者から従業員へ向けてのメッセージ」でなければなりません。人事部や人事コンサルタントが勝手に作るものでもなく、従業員の総意を集めて作るものでもありません。専門家の知恵は活用してもらい、従業員の思いもきちんと汲み取って、その上で、経営者としてどのような人材を求めるのかを決めてください。

 「優秀な上位者に対してパフォーマンスを発揮しやすい環境を、率先して整備してくれる部下たち」が必要なら、上司の指示をきちんと聞く人材が評価されなければなりませんし、「年長者が気づかない新しいアイデアをガンガン出して貰う」ことを求めるなら、部下を押さえ込む管理者は排除される必要があります。

 御社の評価制度は、経営者の思いを落とし込んだものになっていますか?