大家好!今年5月より始まった「営改増」完全実施についてはこれまで上海通信でも何度か取り上げてきました。今回はそのうちの「有料道路の通行料に関する増値税控除について」(財税【2016】86号)についてご紹介いたします。
原則として増値税を仕入控除するためには、増値税専用発票の入手が必要となります。但し、例外として有料道路通行料(高速道路・有料道路・橋・水門)については、料金所で現金支払い時に手渡しされる発票に記載された料金に基づいて、次の公式により自ら控除可能な仕入増値税を計算することが出来ます。
① 高速道路通行料の控除可能仕入増値税額 = 発票記載金額÷(1+3%)×3%
② 一級道路・二級道路・橋・水門通行料の控除可能仕入増値税額 =
発票記載金額÷(1+5%)×5%
ただでさえ渋滞しがちな料金所で、会社名・納税番号・登記住所・電話番号・口座番号及び銀行名を記載しなければならない増値税専用発票を1台ずつに発行するのは物理的に不可能ですので妥当な取り扱いと言えます。計算される増値税額分は支払った料金よりコスト削減できるので、見逃さずに会計・税務処理するようにしましょう。
ここで残念なのが、現状ではETCを利用すると仕入増値税の控除が出来ません。ETCに残高をチャージした時点で発票を取得することが出来ますが、この時点では未だ有料道路を利用していないので、当該発票による仕入控除は不可能です。これについて開始当初は混乱がありましたが、国家税務総局貨物労務税司の副司長が質疑応答で不可能と回答し、国家税務総局のホームページにも掲載されています。
それでは実際に有料道路を利用した際はどうなるかというと、そもそもETCですから専用ゲートを通過してしまい何も取得しません。結局、有料道路を利用した発票は取得
出来ないので控除が不可能となってしまいます。
また、ETCの意味がありませんが、料金所に並んで車載器からETCカードを取り出し、手渡しでETCカードから通行料を支払うことも出来ます。但し、この場合も支払いは出
来るものの発票を入手することは出来ませんでした。
上記の計算式に基づき、高速道路で100元支払った場合の仕入控除によるコスト削減金額は2.91元となります。コスト削減は大切ですが、わずかばかりのコスト削減の為に料金所に並ぶ業務の非効率性も考えるべきかもしれません。また、道路によってはETC割引が設定されているケースもあります。
ETCはもともとハイテクな電子情報システムといえますので、将来的にはチャージ相当額を利用し終えた時点で、チャージ時の発票により仕入控除が可能となるような制度
改正が望まれます。