【2015年11月】コラム第9回 中小企業で果たすべきCFO業務

2015.11.01

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営業企画部 片瀬陽平

コラム第9回目

 企業価値を高めるために多くの企業では経営戦略を実行します。経営戦略には事業ポートフォリオの再構築や有利子負債の削減・コスト削減戦略、M&A戦略などが含まれます。本日はM&A戦略について執筆しようと思っています。

一般的にM&Aといえば、企業の合併買収と解されていますが、株式の取得、合併、分割、営業譲渡、アライアンスなども含んでM&Aといわれることもあります(広義のM&A)。

M&Aは経営戦略の一部であり、その目的は①商品やサービスの拡大による成長戦略、②スキルの強化、③グローバル化、④防御目的などがあります。

【M&Aの目的(一例)】

①商品やサービスの拡大による成長戦略・・・売上増加に影響

②スキルの強化・・・・・・・・・・・・・・競争力(シェア獲得)に影響


③グローバル化・・・・・・・・・・・・・・多角化に影響


④防御目的・・・・・・・・・・・・・・・・敵対的買収に影響

M&Aの目的を明確にし、そのM&Aの計画を定めた後、実行に移ることになります。

 

【実行プロセス】

①買収相手の選定

②デューデリジェンス(DD)

③バリュエーション

④交渉(FA)

⑤買収契約

M&Aの実行プロセスには大きく上記の通りですが、この中でも皆さんが気になるところは③のバリュエーション(価値の評価)の部分かと思います。買収価格に関しては、単体価値(市場価格を指し、市場からみる被買収企業の企業価値)、買収価格(単体価値に買収プレミアムを加算した価値)、潜在価値(買収後の付加価値を加えた価値)の3つの価値から考えることとなり、一般的には潜在価値と買収価値の差額が交渉戦略であると言われております。
M&Aを成功させる要因は、買収価格を適正に算出し、相手方との交渉を自分たちのペースで行うことにあり、その買収価格を適正に算出するための準備として、潜在価値(買収後の付加価値を加えた価値)をしっかりと見極めること、買収後
のシナジーの定量的な評価を行うこと、買収プレミアムの正当性を見極めることがあります。

以前はM&Aは敵対的な企業の乗っ取りなど否定的な言葉で語られることが多かったですが、現在では企業価値の増大を目的する1つの手法として確固たる地位を気づいているかと思います。また、近年では中小企業におけるM&AやクロスボーダーのM&Aなども増えてきておりますが、中小企業の中には、M&Aが経営戦略達成のための手段ではなく、目的となってしまっている場合があることには注意が必要かと思われます。

最後に近年多くなっているM&Aの種類を参考として記載いたします。

【参考】

①事業承継型M&A
世代交代期を迎えている経営者は事業承継をしなければならないものの後 継者難に直面している場合も多く、後継者問題を解決するための有効な選択肢として事業承継(後継者不在問題解決)型M&Aが用いられています。

②事業再生型M&A
事業再生型M&Aの中でも、債権者は早期に確実に債権を回収でき、従業員や取引先は引続き雇用や取引を継続できる等の各種メリットがあるスポンサー支援型M&Aが用いられています。


③クロスボーダー型M&A
海外ビジネスを1から開始すると操業までに多大な工数(FS、設立、雇用、ビザ取得、規程の作成等)が必要となるために、早期に中国やアジア進出を目指す企業においてはクロスボーダー型M&Aが用いられています。