タックスヘイブン対策(外国子会社合算)税制とは、法人税実効税率の低い国(20%以下)に設立した子会社(特定外国子会社等)を通じて行う、租税回避行為を防止することを目的とした税制です。中国は法人税率が25%ですので通常は適用を受けることはありませんが、香港は法人税率が16.5%のため、通常は「適用除外要件」(経済的実体がある場合)に該当しない限り、香港子会社はタックスヘイブン対策税制が適用されます。適用されると、子会社の所得のうち親会社の持分相当部分を日本親会社の所得として課税(外国税額控除により海外納税分は控除されますが)されるため、大幅な税負担となりかねません。
「適用除外要件」は
① 事業基準 (主たる事業が株式や債権等の保有、工業所有権や著作権等の提供、船舶や航空機の貸付以
外である:事業持株会社を除く)
② 実体基準(事業上必要な固定的施設を有している)
③ 管理基準(自ら管理支配を行っている)
④ 非関連者基準[卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運又は航空運送業](それらの事業を主として
非関連者と行っている)あるいは所在地国基準[その他の事業](その事業を主として本店所在地国において
行っている:物流統括会社を除く)を全て満たす必要があります。
事例は、材料仕入を香港、製造を中国で行う来料加工の場合です。
日本親会社(以下P社)が香港子会社(以下S社)に製造を発注し、S社は中国製造子会社(以下C社)と委託製造契約を結び、材料を支給した後、C社が中国にて製品の製造を行い、最終製品をC社からP社に輸出しているとします。
①②③の要件は今回の事例では全て満たしていると仮定します。④については、S社の主たる事業が卸売業であるか、製造業であるかによって適用される基準が異なります。卸売業と認定された場合、原材料を非関連者から仕入れており、[非関連者基準]を満たす可能性が高いです。一方、製造業と認定された場合、S社は製造をC社に委託しており、本店所在地国(香港)において製造を行っていないため、[所在地国基準]を満たさないと考えられます。
資産性所得(一定の配当、利子、株式債権譲渡、使用料等)に関しては、適用除外を全て満たした場合でも、合算課税される場合がありますので注意が必要です。
タックスヘイブン対策税制の本来の趣旨はペーパーカンパニーを利用した租税回避行為の防止であり、経済的実体を有している場合は適用されるべきではありません。しかし現状はこのような形式的な判断基準を含んでいるため、本事例のように経済的実体を備えていると考えられる場合であっても、国税局の判断によってはタックスヘイブン対策税制が適用される可能性があるため注意が必要です。