万博が開催され、市況の好況さを肌で実感できる上海です。昨今の発展スピードの速さには凄まじい勢いを感じます。上海市は1人当たりGDPで既に香港を抜き去るなど、経済成長にともない数年前からは想像もできないほど状況が変化しています。法律改正もその1つ。矢継ぎ早に新しい規定が発表されることもあり、現状を正しく認識する事も難しくなりつつあります。そこで、今回は上海市の[社会保険]と[住宅積立金]の2大【社会保障制度】について最新事情をまとめ、現状を整理してみたいと思います。
まずは、[社会保険]です。上海市の社会保険制度は、中国の中でも「先進的な制度」と言われています。また中国の[社会保険]は、会社負担分も含めると本人給与総額の140~150%となるほど、世界でもトップクラスの高比率という研究結果も発表されています。以下の表は2010年5月現在の上海市における[社会保険制度]を一覧で表したものです。
特に外地出身者を対象とした[総合保険]の加入資格が厳格化された昨年7月の改正は、企業にも大きな影響を及ぼしました。
そして、もう1つの重要な【社会保障制度】が[住宅積立金]です。未だに誤解が少なくないようなのですが、[住宅積立金]は[社会保険]ではありません。[社会保険]とは全く別の【社会保障制度】の1つです。[社会保険]を管轄する「労働局」に比べ、[住宅積立金]を管轄する「住宅積立金センター」は、これまでは厳格な運用を行っていませんでした。しかし、5月半ばより100日間の査察強化活動を行うとも報道されています。
この[住宅積立金]ですが、「住宅積立金センター」が公式に発表している加入資格の基準は、上図「城鎮保険・小城鎮保険の加入該当者全て」となっています。つまり、外省人であっても「都市戸籍(非農村戸籍)」保有者は加入義務が課せられていますのでご注意下さい。
現在の経済成長に加え、政府側も「国民の所得増」を明確に打ち出しています。各企業でも今後の人件費高騰を想定した事業戦略を組み立てる必要性に迫られると思われます。