[2009年4月号]昨今の「リストラ」に対する当局側の動き

 

前回は、上海市における「人員削減(リストラ)」の手順についてのご報告でした。上海市でも特に製造業を中心とした輸出型企業には現在でも非常に困難な状況が続いているようです。今回は、そういった昨今の経済環境に対する中国の労働関連当局の活発な動きを総合してお伝えします。
※クイックマイツのホームページでは、人事労務の時事ニュースを翻訳してお届けしています。
 
     上海:「一部の企業に[週4日]労働時間制が登場」(09年2月6日:新聞記事)
  上海市奉賢開発区の一部企業に「週4日」という時短を通じて、雇用を保障する動きが出ている。開発区が「ワークシェアリング」を奨励する政策を出したのが発端。柔軟性のある労働時間制やシフト制、また在職教育等の措置を取ることにより、「失業者を出さない」ことを優先した政策。ワークシェアリングを実施する期間に人員削減を行わない企業に対しては、「給与を協議によって改定できる」とし、柔軟性のある労働時間制(総合労働時間制、不定時労働時間制)の取得を推進するなどし、雇用の保障を第一優先としている。
 
● 北京:「当面の経済情勢下で労働関係を安定させるための意見」(09年2月19日:総工会)
北京市において、労働社会保障局、総工会、企業連合会が共に審議を行い、上記意見を提出。時短、ワークシェアリング、話し合いによる給与改定などの方法を用いて、人員削減を避けるための処理を推奨している。また労働契約法に定められた「リストラ報告義務」の他に、本年度内に全体従業員の30%が契約満期を迎え、うち80%未満としか契約更新しない企業にも労働行政部門への「報告」を求めている。
 
     北京:「全国総工会が、最低賃金基準廃止に反対」(09年3月10日:中華全国総工会)
労働者にとって、最も基本的な生活をするために必要な「最低保障」が最低賃金基準であり、これを廃止して「不況を乗り越える」という方策を取ってはならない。賃金の上昇は内需を拡大し、また長期的視野では内需を拡大するための戦略の保証ともなる。現在「賃金法」を起草しており、[正常な賃金上昇制度]を設けることを基本指針として進めている。
 
 このように、「リストラ(人員削減)」を回避するための「給与調整」が徐々に認められてきていました。この流れに乗じて「最低賃金保証を撤廃すべき」という議論や事例も同時に発生してしまい、そういった動きに警鐘を鳴らしたのが「中華全国総工会」の声明発表と受け取れます。
 
 また、忘れてならないのが「法律基準」です。どの通知にも「法律以上に労働者を保障せよ」とは語っていません。上海市のある「総工会」でも「法律を守った正規の手続き上のトラブルなどに対しては、法律以上を要求する従業員に対してなど、総工会として積極的に企業に協力します」と発言しています。実際に、昨今激増している「労働仲裁」においても、労働者側が完全勝利を収める案件は全体の2割程度しかないのが実状です。

「当局」や「組合」は「労働者の味方だけ」という認識ではなく、会社側がしっかりと「法律を守っている」状況であるならば、積極的にそういった機能を活用することも重要な手段となるのではないでしょうか。