[2008年10月号]「労働契約法 実施条例」概要

「労働契約法 実施条例」概要

 

ついに、「労働契約法 実施条例」が発布されました。
「無固定期限契約となる契約更新回数」「労務派遣の業務範囲」「経済補償金の支払い方」などが全て明確にされることが期待されていたのですが・・・。
今年の5月8日に「草案」が公開され、9月3日に国務院にて「草案を原則的に採択」。そして9月18日に「労働契約法実施条例」として「公布」されるに至りました。その間に起案された意見は、8万2000条を超えていたそうです。これを関連各方面との意見調整を経て「公布」と同時に「施行」となったのが今回の実施条例となります。
 今回は、その概要についてお知らせいたします。
 
まず、国務院法制弁公室責任者が行った「労働契約法実施条例」についての記者会見において、「労働契約法の施行によって混乱が生じている理解の相違点」として以下の3つ指摘しています。
(1)「期間の定めのない労働契約」とは、就職すればまじめに働かなくても解雇される心配のない「終身制」を意味しているのではないか?
(2)使用者(会社)が労務派遣を濫用することが、労働者の合法的な権益を侵害するのではないか?
(3)「労働契約法」に定められた、違法な解雇を行ったときの「経済補償金」と「賠償金」は、同時に適用するのか?
 
 残念ながら「無固定期限となる契約更新回数」については、取り上げられていません。(2)の労務派遣については、「草案」から条項が大幅に削除されてしまい、より一層不透明感が出てきてしまっています。よって、まだまだこれからの地域ごとの「通知」や「条例」などに注目が必要になると思われます。
それでは、以下明確になったところを中心に、大きなポイントを5つ紹介します。
 
(1) 違法な「労働契約解除」における、賠償金と経済補償金の支払い方法について(第25条)
 「労働契約法」において定められたのは、「法律にない理由」での契約解除は、全て違法な解除とされ「2倍の経済補償金を賠償金として支払う」となっていました。今回の実施条例において、「2倍の経済補償金=賠償金」とされ、さらに通常の経済補償金を支払う必要がない事が明示されています。
 
(2) 「従業員名簿」を作成しない場合の罰金規定(第32条)
 「労働契約法」には、「従業員名簿を作成する事」が義務付けられています。これを作成しない会社に対しては「改善命令」が出され、従わない場合2,000元~20,000元の罰金が科せられる事が明記されました。

(3) 
使用者からの「契約解除」(第19条)、労働者からの「契約解除」条件を明文化(第18条)

(4) 
「期間の定めのない労働契約」を締結した際の「契約解除条件」を明示(第19条)
 「労働契約法」に定められた基本原則は、何ら変わっていません。ただ、今回の実施条例にはより分かりやすく整理されて「契約解除条件」が明記されています。また、「期間の定めのない労働契約が、まじめに働かなくても解雇されない終身雇用」を意味するものではない事も明らかにされています。

(5) 
「定年退職年齢」の有効性について明示(第21条)
 「労働契約法」においては、「定年退職年齢」という表記は用いられず、「労働者が法定通りに基本養老保険待遇を享受し始めた場合」となっていました。しかし、実施条例には「定年退職年齢に達した場合、労働契約を終止する」と明記されています。
 
記者会見では、「この実施条例は1、労働契約法との一致性の原則 2、労使双方の協調性の原則 3、労働契約法の実施性の原則 の基本原則に従って作成」したと公表しています。不明確な点は依然として多いものの、内容的に「労働者に偏りすぎ」とはなっていないと個人的には感じています。内容を吟味し、冷静なご対応が必要だと思います。