【2025年7月】あなたの会社、勝てる領域でプレーしています~??

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~B to B企業が高い利益率を継続する方法はこれだ!!~

先月14日、日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールを買収するニュースが飛び込んで来ました。100%買収ではありますが、国家安全保障協定を締結し、アメリカ政府が黄金株(株主総会で議案に対し拒否権を発動する事が出来る)を取得する事と、買収とは別に28年までに日本製鉄が新たに約110億ドル(約1兆6千億円)の投資を行う事が条件となります。漸くこれで1年半にわたる買収交渉が決着しますが、日本製鉄の何としても買収しなければ自社が生き残れない揺るぎない決意がこの成功をもたらせたものとその熱意に感服しています。


揺るぎない決意と言えば、企業の構造改革を実施する上でも絶対に必要ですが、その構造改革を実践し25年3月期決算で、過去最高益を出す予定のJVCケンウッドについて研究してみたいと思います。

JVCケンウッドに関しては、23年9月中国子会社を持分譲渡される時にお手伝いさせて頂いた事を思い出します。

 

5期の連結経営状況
単位:億円
項目 2021年3月 2022年3月 2023年3月 2024年3月 2025年3月
売上高 2,736 2,820 3,369 3,595 3,703
経常利益 45 85 211 182 235
売上高
経常利益率
  1.6% 3.0% 6.2% 5.1% 6.3%
総資産 2,643 2,808 2,993 3,168 3,133
総資産
経常利益率
1.7% 3.0% 7.0% 5.7% 7.5%
総資産回転率 1.03回 1.00回 1.12回 1.13回 1.18回
自己資本比率 24.46% 28.31% 33.01% 36.24% 39.93%
従業員数
16,956人 16,585人 16,277 15,880 15,541

この5年間で売上は35%、経常利益は422%増加。売上高経常利益率も25年3月期では7.5%まで上昇、総資産回転率も1回転を超える状況となり、自己資本比率は40%に近づき、逆に従業員数は5年間で1,415人減少させ、一人当たり賃金総額をアップさせています。

JVCケンウッドは、2008年にJVC(日本ビクター)とケンウッドが経営統合してできた会社ですが、この当時のJVCの売上高は6,583億円、最終損益が467億円の赤字。ケンウッド側は売上高が1,196億円、最終利益13億円。大が小を飲み込みながらどの様に大構造改革を行ったのでしょうか?

この構造改革を進めたのは現JVCケンウッド社長CEOの江口祥一郎氏です。
40代半ばでケンウッドのアメリカ法人から呼び戻されてこの重責を担当しました。
江口氏が執った戦略は、以下の通りです。
企業構造改革の内容
1
JVC、ケンウッドともに従前はBtoCでしたが、中国、韓国の台頭から、BtoCでは価格競争に巻き込まれるリスクが高いため、BtoBにシフト。
2008年売上構成:BtoC75%、BtoB25%
2023年売上構成:BtoB75%、BtoC25%と完全に逆転➡サステナビリティ経営を推進。
2
再生をやり抜くマインド面の意識統一:「断固としてやる」、「ひるまない」、「ためらわない」、「辛抱強くやる」、「毅然とした態度で実行」、「誠意をもって実施」、「改革目標を明確にする」、「達成後のビジョンを示す」
3
赤字の不採算事業を最優先で閉鎖!!(江口氏は100社以上の不採算グループ企業を閉鎖)
4
勝てる領域でプレーする!!無線システムは、40年以上前から製造実績がありケンウッドの牙城!!(この分野は参入障壁が高く、今でもコンペティターはモトローラと他1社ほどなので価格決定権を持てる。アメリカの輸出先が、警察、学校などの公的機関の為トランプ関税も掛からない。)JVCが強みとしてきたAV事業は、他事業の補完的な位置付けとする。過去の経験則から、成長分野≠儲かる分野である。
5
事業ポートフォリオの一つとして、車載用製品を重視➡車載用製品のナビゲーターは成長分野ではあるが、新規参入企業も多い。JVCの撮像や映像、圧縮技術を使ってドライブレコーダー製品に進出。

2008年から17年間の月日を経て、JVCケンウッドは、2025年3月期には最高益が予想されています。

江口氏の大胆であり緻密、社員も巻き込んで戦った大構造改革が漸く花開く時が来たと言えるのではないでしょうか?